みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。
本日は、京都の社会保険労務士 福田秀樹先生が講師で行われた「顧問先を人事倒産から守る実務ポイント」という税理士会の研修を受講してきました。いくつか印象に残った点がありましたので、まとめてみたいと思います。
1.働き方改革の「長時間労働の是正」は企業側の真剣な対応が必要
以前のブログで、働き方改革のいくつかのテーマの概要をお伝えしましたが、講師の先生は、「長時間労働の是正」と「同一労働同一賃金の強制導入」が働き方改革の二大テーマとまとめられました。
そして後者の「同一労働同一賃金の強制導入」は、日本の社会がつくってきたシステムが急には変えられないから、実効性ある立法化、運用は現実的には難しいとのお考えでした。よってそちらの対応は、結果的に企業はあまり考える必要がないかもしれないですが、前者の「長時間労働の是正」の方は企業が真剣に対応を考えなくてはいけないとのことです。
この「長時間労働の是正」については、2017年度内に労働基準法の改正法案が成立し、2018年度中が準備期間で、2019年4月~法律が施行されるスケジュールとのこと、企業も対策を迫られ、大企業はもうその対応の準備にかかりはじめているとのことでした。
2.長時間労働是正の内容について
労働時間は、1日8時間・週40時間の法定労働時間の原則は今まで通り改正はありません。
ただ多くの会社では現実的に残業があると思います。現在は使用者側と労働者側が労使協定を結べば、残業は出来ますが、厚生労働大臣の限度基準告示により月45時間以内かつ年360時間以内の限度額が定められています。ただその時間を超えても労働基準監督署の指導の対象になるのでしょうが、罰則規定はありません。
これが、改正により労働基準法に明記され、罰則付きで実効性が担保されることになります。月45時間以内の残業を守るなら、平均すれば1日あたり2時間ぐらいの残業が上限で、休日出勤もないということになります。
そして、ここからがまったくの新しく定められる規制になります。現在は業務上どうしても上記の月45時間かつ年360時間以内を超えて残業が必要な場合については、労使が特別な協定を結ぶことで、実質的には無制限で残業することが出来たのです。それが労働基準法の改正により、特別な協定を結んだ場合でも、次のような上限規制が罰則付で設けられる方向で法案がつくられるようです。(少し難しいですが、難しそうなら斜め読みしてください。)
①年間の時間外労働は月平均60時間(年720時間)以内
②休日労働を含んで、2ヶ月ないし6ヶ月平均は80時間
③休日労働を含んで単月は100時間未満
④月45時間を超える時間外労働は年半分を超えないこと
以上の四点です。
それぞれ単独では理解出来るのですが、本日の講師の福田先生は、結局この①~④の規制を完全に守ろうとすると、個々の従業員の労働時間の把握・管理が相当難しくなってくるはずと説明されました。
よって、絶対に法律を守らないと株価にも影響する上場企業などは、はじめから月の残業時間を、年間360時間の段階でクリアすることを考え、毎月の残業時間を 360 ÷ 12月 = 30時間以内で抑えてしまうことになるのではないかというお話でした。
3.中小企業はますます人手不足になり業務を縮小せざるをえなく、場合によっては倒産も。
上記のような対応を考えている大企業は、全体の残業時間が減少すると、業務がまわらなくなるケースも多いので、新たな人材採用でその部分をまかなおうとしていくだろうとのことです。
そうなると、採用力の強い大手企業のは、中小企業にいる人材もターゲットにしていき、中小企業から人材が引き抜かれていく可能性が高いとのこと。
その一端を示す例として、講師の先生から
・ある中小企業であまり働かなくて社長が困っていた人材が、大企業に待遇をアップさせたうえで引き抜かれた話、
・中小企業が会社のホームページにやる気のある若手の顔写真・実名を出してしまうと、人材スカウト会社を通して大企業のリクルートの対象となってしまうので、中小企業はホームページに実名を出さないようにしましょうという話
等がありました。大企業が現在、人材を集めようとしている姿は、私の想像を超えているようです。
こんな状況では、中小企業は、「今いる従業員を待遇面を含めて大切にすること、そして採用サイトを作る等本気になって新しい人材の採用を考えていくことが必要である。そうでないと人手不足になり、事業を徐々に縮小させていく方向に行かざるをえなくなる。最悪の場合は人手不足で倒産してしまう会社も増えてくるのはないか。」と話されていました。
今でさえ、なかなか人の採用が難しい中小企業です。私も経験がありますが、経営者と話をすると、「特に若い世代は時間に関係なく残業してでもひたすら仕事に打ち込んで、はじめて仕事をする技術が身につき、成長するんだ」というふうなことを言われる経営者もおられます。
私も会社員・公務員のときは残業をかなりしてきたので、その考え方もわからないわけではありません。ただ今後はその考え方を改めていかないと中小企業は、生き残っていくのが難しくなってしまうのでしょう。私の顧問先にもそのようにお伝えしてきたいと思っています。
4.会計事務所業界も人手不足のようです。
話は以上で終わりなのですが、よければもう少しお付き合いを。
思えば、私が市役所を退職し、ハローワーク等にも通いつつ会計事務所への就職活動をしている12~13年前は、それほど大きな会計事務所でなくても、就職希望者がいっぱいいました。一人の会計事務所の求人に十人以上が応募していることは当たり前であったような気がします。
それが、会計事務所業界も最近は人を採用するのに苦労していると漏れ聞こえてきます。本当に時代は変わったなと心より思います。私も今、就職活動していたのなら、もう少し苦労せず、またもう少しいい会計事務所へ就職できたのかもしれません。言っても仕方がないことですが・・・。
会計事務所への職をみつけたい人からみれば、きちんと条件を選んで就職できるいい時代と言えます。
毎年1月~3月の確定申告期等は残業が多く、それなのに給料も少ないことから、ブラックと言われることのあるこの業界のあり方も、いい方向に変わっていってくれればと思います。
今西 学
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