『健康診断という「病」』という書籍で会社の定期健診の意味を改めて知る。

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。

2週間ほど前に近くの医院で特定健康診断を受けてきました。先日健診結果を聞きにいくと、血液検査で昨年同様、肝臓に関する数値が基準値を少し超えていて、LDLコレステロールという悪玉コレステロールも基準値を超えていました。

腹部超音波検査というのを別途保険診療で診てもらったのですが、肝臓に脂肪はついておらず、脂肪肝ではないとのこと。よってメタボではないようですが、肝臓の数値が高いのは少し気にはなりますね。お酒は飲まないのですが。

1.自営業になったら会社の健康診断はありません。

会社員の方は会社で定期健康診断が毎年一回行われているはずです。しかし、退職し、自営業になる場合は、当然会社の定期健康診断の受診機会はなくなります。

ただ自営業になると、都道府県単位の国民健康保険に入ることが多いかと思いますが、国民健康保険に加入すると、特定健康診断の受診券が年一回送られてきます。(ちなみに私の住んでいる大阪府大東市では自己負担額は平成29年度は700円でした。)

特定健康診断は、40歳~74歳までの方を対象にした生活習慣病いわゆるメタボ対策で行われる健康診断です。よって、会社で受けていた健康診断とは少し項目が違います。(こちらに検査項目が記されています。)

特定健診の検査項目は、有名な腹囲測定以外に、身長・体重の測定、尿検査、血液検査、血圧、心電図の検査のみとなります。(ただ、心電図検査は医師が必要と認めたときとなっているようで、検査してもらえないこともありました。)

会社の健康診断には検査項目があった、胸部エックス線検査、視力及び聴力の検査はありません。また、40歳以上では会社の健康診断では必須の心電図検査も特定健診では医師の判断で受けるべきか決まるので、必ずしも検査されるわけではありません。

生活習慣病いわゆるメタボ対策のための健診という趣旨を考えると、胸部エックス線検査、視力及び聴力の検査がないのも仕方のないことと考えられるでしょう。会社の定期健康診断より少し検査項目が少なくなって寂しく思う気持ちも私にはありました。

2.会社の健康診断の目的は個人の長生きのためのものとは言えない

会社(私の場合は役所勤務が長かったのですが)にいたとき、会社の健康診断は、会社が社員を心配して与えてくれる福利厚生だと勝手に私は解釈していました。

費用も事業主が負担してくれて、勤務時間中に堂々と仕事を中断して健康診断してもらえる、社員の身体の事を気遣ってくれるありがたい福利厚生事業だと、勉強不足の私は、そんなふうに思っていました。

その後勤め人でなくなり、社会保険労務士の勉強をするようになって、毎年の定期健康診断は、事業主の福利厚生ではなく、労働安全衛生法という法律に基づく、事業主に課されている義務であるということが理解しました。

ただ、このことはぼんやりと試験のために覚えただけで、あまり深くその時は考えていませんでした。

今回、健康診断について書かれた新書を読みました。会社の産業医の経験もある亀田高志氏著作の『健康診断という「病」』という書籍です。そこで会社の健康診断の意義についてあらめて深く認識することが出来ました。

例えば、先ほど述べた特定健診では検査されない胸部エックス線検査。肺がんの検査のために行われていると思っていませんか?私もその目的がメインだと思っていました。

しかし、この書籍では、胸部エックス線検査は、伝染病である結核に感染していないかが主たる目的の検査であると書かれています。

1人の患者さんから同僚たちに伝染していくために、会社でスクリーニングを行うことは働く人を守り、事業の運営を守るためにも合理性がありました。

と、その導入の経緯が書かれています。

よって、たまたま胸部エックス線検査をすることで、肺がんを見つかることがあっても、それは付随的効果であり、胸部エックス線検査が肺がんの早期発見の検査として有効かどうかも専門家の間で意見が分かれている旨書かれています。

このように、会社の定期健康診断は、

・社員が健康で長生きするためにを目的とするものではなく、結核等の伝染病が起こらないようにすること、

・そして就労区分(そのひとの仕事や職場環境と照らし合わせて、そのまま働いてよいか、勤務に制限を加える必要が無いかを判断)を行い、就業上の措置を行うこと、

・保健指導などを通じて動脈硬化による脳卒中や心臓発作を防止すること

が大義名分にあると著者は述べられています。

私なりの言葉で言えば、会社の定期健康診断は、労働基準法から分かれた労働安全衛生法で定められている事からも、伝染病対策と労災事故が起こらないようにするために行われているということなのでしょう。

もちろん、著者も書かれているように、その定期健康診断を活用して、自分の健康を見直したり、健診結果をきっかけとした精密検査でがんを見つけられることもあるでしょうから、受診者のメリットがないわけではありませんが。

3.会社の定期健診ではがん検診は行われていない

以上述べたきたように、会社の健康診断は、著者によると、

定期健診のターゲットは結核を除き、基本的に動脈硬化による脳卒中や心臓病です。

とのことで、がん検診は行われていません。この書籍では、「職場でがん検診が行われない理由」も書かれています。

その理由を要約すると、

①職場の定期健診が旧労働省管轄で、自治体のがん検診が旧厚生省管轄で行われてきたという経緯から、がん検診は自治体(あるいは健康保険組合)が提供し、会社は提供義務がないという暗黙の了解があること

②定期健診以上にがん検診の金銭的負担、時間的負担を経営者に課すことの難しさがあること、

③(上記で述べたとおり)会社の定期健康診断の趣旨から考えると、がんを早期発見する役割や責任を課すのは趣旨が違う

等が書かれています。

よって著者は、がんの検診は会社では行われないゆえ、一定の年齢になったら各自が、タバコやお酒の度合い、肥満の度合いなどの各自の生活習慣等によるリスクをふまえ、必要ながん検診を選択して人間ドック等で受診するよう勧めておられます。

これについては、すべてのがんを見据えた検診を受けるべきという意見も、逆にがん検診は効果が無いという意見も目にすることがありますが、著者はその中間的位置づけの立場であると思います。

4.まとめ

以上の記載を踏まえると、会社員の時の職場の健康診断でがんのリスクを見てもらっていたわけではないということがわかりました。先ほども述べたように国保の特定健診では検査されない、胸部エックス検査も肺がん発見をメインとした検査ではないようですから。

そのことをふまえるとがん予防・早期発見については、検査項目が特定健診より多かった会社の定期健診が受けられなくなったことを寂しがる必要もないのでしょう。

現在51歳の私は、自営業になってから、より日頃からの健康管理の意識をもつようになりました。引き続き、その意識を持ち続けると共に、身体の不調が今後出てくれば、早めに病院で診察を受けるようにしていきたいと思います。

編集後記

「健診」と「検診」の意味が違うのはどこかで聞いたことがあったのですが、どう違うのか明確ではありませんでした。今回、この書籍を読んで、その違いも勉強出来ました。

「健診」とは、全般的な健康状態や将来のリスクを含めて評価すること(未然防止と健康状態の維持)を意味し、「検診」とは、なんらかの病気を早期発見するために行うことを言うそうです。

豆知識としてしっかり覚えておこうと思います。

 

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら