税理士資格取得のために必要な実務経験2年は検討の余地ありでは?

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。

税理士試験も終了し、会計事務所への就職活動を考えている方も多いかと思います。私は30代になってからの会計事務所への就職だったので、会計事務所への就職がなかなか決まらず苦労しました。今はこの業界も人手不足になっているよおうで、いい人材がとれないと嘆いておられる税理士事務所もあるようです。よって、15年前よりはもう少し会計事務所への就職がしやすく、実務経験も積みやすくなっているのかもしれませんが。

(1)税理士になるために必要な2年間の実務経験

税理士試験に五科目合格しても、それだけでは税理士資格は取得することが出来ません。二年間の会計事務所での実務経験(正確に言うと企業の経理などでの経験でも可になるときあり)が必要となります。これは、知識だけで資格を与えるのではなく、実務も出来て初めて資格を与えるという意味で、税理士資格を一定のレベルに保つために設けられた制度です。よって、会計事務所へ2年間勤めて、その後所長に、2年間実務を積みましたという証明の印鑑を押してもらって初めて税理士資格取得の申請が出来ることになります。

比較すると、私が同じく保有する社会保険労務士も試験に合格しただけでは、資格を取得することが出来ません。二年間の実務経験が原則必要ではあります。しかしながら、社会保険労務士の場合は救済措置というか、実務経験とは別の道があります。それは、社会保険労務士連合会が開催する「労働社会保険諸法令関係事務指定講習」(事務指定講習)を受講し修了すると、実務経験と同様な技量が身についたということで、資格取得出来ることととなります。

事務指定講習は、通信指導過程と面接指導課程の二つから成り立っています。通信指導過程は、郵送で送られてくる与えられた設定をふまえ、社会保険労務士が提出すべき届出書を実際に作成して本部へ提出するというものです。また面接指導過程は、会場へ足を運び学習する講義形式で、4日間全日受講することになります。
その事務指定講習が修了すると、社会保険労務士資格に登録出来ることになります。

(2)実務経験は資格取得に本当に必要なのか?

司法書士や行政書士など実務経験がなくても登録出来る資格はあります。
その一方、他の資格でも実務経験が必須とされているものはあります。例えば、医師は試験合格し、医師免許を取得した後、2年間の研修医としての実務が課されており、司法試験合格者も1年間、司法修習があり、その後、裁判官・検事・弁護士とそれぞれの道を進むようです。

ただ、実習制度がある程度整った上記資格と違うところは、税理士は、あくまで自分の力で実務経験を積む会計事務所を探し、2年間の実務を積んで、所長の証明印をもらわなければいけないということです。

税理士試験は年齢制限がなく受験出来ますので、何歳からでもやりたいと思えば挑戦出来ます。しかし試験は乗り越えられても一定の年齢に達した方は、雇ってくれて実務経験を積む会計事務所がなかなか見つからないのが現実でしょう。よって、実質的にはそこで断念せざるを得ない、あるいはそう考えるから受験もしないということもあるでしょうから、一種の年齢制限になっていると考えてもよいでしょう。(もちろん、無給でもいいとなれば勉強させてくれる会計事務所はあるかもしれませんが、それも難しい気がします。)

また、徒弟制と言われる私から見たらあまりいいとは思えない税理士業界の体質を強化しているのもこの制度が一因であると思います。(表向きにはそういうことは決してあってはなりませんが)実際には所長先生を怒らせたら、証明印がもらえないという恐怖感が勤める方にはあるのではないでしょうか。

もちろん、所長を怒らせても、法的な問題があろうからすぐ解雇はされないでしょう。ただ小さい会計事務所で行われることですから、仕事を過重に与えられる、上からの権力を行使することでメンタルを傷つけられることが原因となって退職せざるをえなくなる可能性もあります。

そうなると、その勤めた期間の証明印は二年なくてももらえ、その不足分を他の会計事務所に勤めてもらうことになります。ただ、現実的には感情がこじれてもらえなかったりするリスクもあります。

また1年半で退職し、残り半年だけ雇ってくださいと別の会計事務所へ就職しても最低三年は勤める気がないと雇わないと考える事務所も多いでしょう。そうなると税理士として独立しようと考えている人にとっては、実質的に独立の時期は大幅に遅れてしまうことになります。

昔と比べて、ネットが発達したこともあり、またパソコンによるデータベースなども充実してきたこともあり、実務の情報も以前と比べて身近なものになりつつあると思います。昔なら、師匠である税理士に師事して、そこから直接指導を受けないと分からなかったでしょうが、時代と共にそうでなくなってきていると思います。

(3)まとめ

2年間の実務経験を必須にすることは税理士というブランドを守るためと考えれば理解できます。しかし時代は変わっているので、税理士の資格取得に対しても、社会保険労務士連合会が実施しているようなかたちで、税理士会が主導する形で、実務の実習が出来る制度を作った方がいいと個人的には思います。せっかく難しい試験を数年かけて合格したのに、就職先が見つからず、チャンスが与えられないとは本当に悲しいことです。

こう考えるのも私自身が30代半ばで就職活動を始めたこともあり、実務経験を積みあげるのに非常に苦労したからです。実務経験は合計で6年間ほど積んだと思いますが、その6年間の間で、2日で解雇されたところも含めて7つの会計事務所を渡り歩きました。多くは辞めざるをえない状況になって、転職せざるを得なかったからです。

また、そんな私の会計事務所の就職・転職活動についても近いうちに書いてみたいと思っています。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら