みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。
後田亨氏著作の新書『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』が出版されたので、早速購入して読んでみました。
著作の作品は、「生命保険のウラ側」「保険会社が知られたくない生保の話」など既に何作か読んでいるのですが、これらの作品それぞれは、刺激的でしたし、今まで私が感じていたことをうまく論理的にまとめた本でした。
今回の書籍、手に取った際、以前の作品と内容が重なる部分もあるかもしれないとは思いました。だが、何か新しく学べることがあるかもしれないと考え、迷わず購入し読んでみると、期待通りいい内容でした。
この新書では、著者が、一方的な主張を掲げるかたちより、読者の納得感を高めるであろうとのことから、対話形式で書かれており、読みやすくなっているのが特徴であると思います。
1.著者の生命保険に対する基本的な考え方
著者の基本的な考え方は、保険を否定するものではないが、
・自分に必要な最低限の保険を、
・出来るだけお金をかけずに
加入しましょうということです。
よって、自分に必要な最低限の保障をするためには、いろいろな公的制度を知る必要がある。例えば、
・死亡保険に加入するときは、夫が死亡しても、妻には国民年金・厚生年金から遺族年金が支給されるケースがあるので、まずその金額を把握等したうえで、必要な保障額を考えること
・医療保険に加入を考えるなら、自分の加入している健康保険から高額療養費という制度により、自己負担額の上限が定まっているはずであるから、その制度を知ったうえで、加入が必要か判断すべきであること。(著者は医療保険に関しては否定的です。なお、私自身も同様な考えを持っています。)
を述べておられます。
そのうえで、
・医療保険については、入院等、治療に伴う費用は、わずかでも自らの貯金があればまかなえるため、ほぼ誰も加入する必要はないこと(保険よりも、貯金を用意することで、リスクに備えること。)
・がん保険についても、一定の貯金がある人なら、診断一時目当てに加入する必要はないこと
を述べられています。
そして、出来るだけお金をかけずに加入するということで、保険に加入する必要がある場合には掛け捨て保険を推奨されています。
積立型の保険は、代理店等への販売手数料が高額であるため、解約した場合に、元本割れする期間が加入してから当面続いてしまうゆえ、お勧め出来ないと主張されています。
保険の販売手数料が高いということは、保険代理店を約6年間行っていた私も実感しています。(私は結局一本も契約をとれず、代理店を廃業しましたが。その際のブログ記事はこちら)
保険会社も利益をあげるためにある存在であるゆえ、手数料をとるのは当然でしょう。ただ、高すぎる保険手数料(しかも開示されていないケースも多い)は、保険加入者にとっては、デメリットになることを知っておくべきでしょう。
2.保険で運用してはいけない(個人年金保険や外貨建て保険で運用してはいけない)
先の「1」の論点は、以前の著作でも同様な主張が述べられていたと思います。今回の著作では、著者は、「保険の価値は保障」につきると、保険を通じて運用することは不要だという点も断じておられます。
著者は、個人年金保険や外貨建て保険については、運用という観点からはお勧め出来ない旨明確にされています。この視点が、(著者のすべての著作を読んだ訳ではないですが)以前の著作では、あまり書かれていない論点だと思います。
保険で運用をすると考えたときの問題点として、先に述べたとおり、やはり保険加入から当面の期間、解約すれば元本割れしてしまうことを指摘されています。
よって、個人年金保険に加入しても、途中で解約することがあれば、元本割れしてしまう点、そしてその元本割れの原因が高すぎる販売手数料であることを記されています。
対話形式で書かれているこの書籍で、30歳の方が、終身保険を保険代理店から勧められたことについて以下のようなやりとりが書かれています。
「老後の資金づくりにピッタリなものはないですか?って聞きました。それで、契約期間中に死亡しても200万円もらえて、65歳で解約したら、払戻率は保険料の約110%。保険は長い目で見ると、預金よりお金がふえるから得だって説明されて、つい・・・」
「そもそも預金と比べるのが間違いなんですよね。預金は明日引き出してもマイナスにならないです。一方、保険は途中で解約したら元本割れするリスクが大きい。今回のプランだと35年もマイナスが続きます。リスクが違うので比較してはいけないんです。」
なるほどと思いました。預金と保険とはリスクが違うので、30年間の間に何が起こるかわからないリスクを無視して比較するのはおかしいとは言われればその通りですね。
また定期預金なら、期間の途中で解約しても元本は保証されます。安易に30年後のピンポイントで、また途中解約リスクを考慮せず比較することは、やはりおかしいのでしょう。
また、30年後までの金利がわからないので、定期預金を30年間、更新し継続すれば、110%に近く、またはそれ以上になっている可能性も考えられるでしょう。
著者は、この理屈のもとで個人年金保険に入るなら、全額所得控除出来る、401K(個人型確定拠出年金)に加入すべきであると唱えられています。これは、私自身の元来の主張と同様です。
また、外貨建て保険についても同様に、運用の手段にしてはいけないと述べられています。ただこの点については著者とは私は少し意見が違います。
外貨建てで3%等の利率が最低保障されている外貨建保険については、私は一定の資産を保有している方で、かつリスク分散で外貨も保有したいという人には、悪くない運用かもしれないと思っています。
ただ著者の販売手数料が高い外貨建て保険における途中解約の元本割れリスクを考えるべきという主張、為替リスクを考えるべきという主張には、最終的な意見は異なりますが納得は出来ます。
3.それでも保障が必要な場合、どの保険がいいかまで書かれている
この新書の特徴のもう一つは、そういった著者の主張を述べたうえで、もし必要性に応じて保険に入る場合には、どの商品がいいのか「死亡保険、就業不能保険、がん保険、医療保険、介護保険」にについて書かれています。
そして「経済合理性」「不確実性」をキーワードにその理由まで書かれています。(先に述べた理由から運用するための保険ではなく、掛け捨て保険が中心ではありますが・・・)この部分も参考になるかと思います。
4.まとめ
以上、保険を安易に保険の営業マンの言いなりに、保険に入っている人には読んでいただき、今後の保険の見直しに役立てて欲しいと思います。
ただ、私も保険の相談を受けることがありますが、いったん終身保険などの加入期間の長い保険に加入されていると、途中で解約すると元本が大きく割れるケースがあります。
よってあまり良くない保険と思っても、解約して変更を勧めることにためらわれてしまうケースがあります。
また、加入をやめると、保険料の削減というメリットはありますが、やめた途端に、保険事故が起こる可能性もないわけではありません。よって、解約を提案することで、結果的に恨まれないのか気がかりになるケースも多いです。
そう考えると本当は、社会人になったばかりの若い方が初めて保険を考えるときに、こういった書籍を読むことが望ましいと思います。
自分で給料をもらい、保険に入ることが一人前というイメージもありますが、その前にぜひこういった学習をし、保険とは何のために入るのかをまず知ってほしいと思いますね。
もちろん、保険の見直しにも有効になる知識でもありますよ。対話形式で書かれているので読みやすい、また新書ですが内容が深い書籍です。既に保険に加入している方も、ぜひ読んでこれからの保険を考えていただきたいと思います。
今西 学
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