税理士を変更する場合の会計データを含む税理士間の引継ぎについて

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。

開業して約7年余り、顧問契約を結んでいただいたお客様には、今までの税理士を変更されたお客様もおられます。そして、逆に私の元を離れ、他の税理士に顧問契約を変更された方もおられます。

さて、一般的に税理士変更のときに税理士同士の引継ぎなどはされるものでなのでしょうか?

1.税理士の乗り換え

インターネットが発達し、ホームページをもち、報酬や業務内容を明確にして敷居を低くした税理士事務所が増えてきました。

また税理士業は「先生業」で契約すれば継続してご指導いただくものというイメージがなくなってきたこともあり、契約した顧問税理士を変更される経営者も少しずつ増えてきているのが時代の流れだと思います。

税理士の間でも、昔は「自分のお客様をとられた」ということで、新しく契約される税理士に対して、圧力・苦情を言うケースもあった旨聞いています。

今でもないことはないのでしょうが、税理士の変更が珍しくなくなってきた時代ということもあり、そのようなこともだいぶ少なくなっている気がします。(まだ「営業妨害」と、文句を言われる方も残っておられるかもしれませんが)

自由競争が原則ですので、もちろん税理士がついているお客様に営業をするのは法的に問題があることではありません。

私も無理矢理というのはないですが、お声がけがあれば、業務内容・報酬をお伝えすることはあり、それで顧問契約を結んでいただいたこともあります。

気持ち的には、私もお客様を奪われる立場になると、あまり嬉しいものではありません。ただ、その原因は価格の場合もありますが、お互いの相性の問題である場合も多いと思います。

価格の場合は、あきらめがつくし、また相性の場合は、私の方も相性が今ひとつと感じている場合もあるゆえ、あまり腹立たしく思ったりすることはありません。ましてや、次の税理士に対して文句をいうつもりは全くありません。

逆に乗り換えていただき、私と顧問契約いただく場合も、前の税理士に対して申し訳なく思う気持ちはあまりありません。お客様が選ばれたので、それはその選択を尊重し、自分が前の税理士より、よりよく頑張ろうと思うだけです。

ただ、心がけていることは、よっぽどのことがない限り、前の税理士の悪口をいうことはしないよう心がけています。

お客様に不満があれば、それについてはきちんと確認し、その部分は私とご契約いただいたら不満を感じないようさせていただく旨お伝えすることはあります。(報酬との兼ね合いの場合もありますが)

が、一緒になって、「その税理士はおかしい」ということは、お客様と共感することになるゆえ盛り上がるのでしょうが、それでもよっぽどのことがない限り言わないようにしています。

前の税理士といくらの顧問料で、いかなるかたちの関与を行う旨の合意があったのか?それを知らない自分が、一方の話だけを聞いて、前の税理士の文句をいうのは違う気がするからです。

(乗り換えの形で私と契約していただ方は、実はそれほど多くはないのですが、その理由は前の税理士とは世代が違い、話があわなかったというケースが多かった気がします。

よって、前の税理士の仕事振り自体を批判された方は少なかった気がしますので、自然と私も前の税理士を批判することがなかったというのもあるかもしれませんが)

2.税理士間の引継はあるのか?

では、税理士が変更になるとき、従前まで顧問契約していた税理士が、新しい税理士へ直接会って引継ぎをすることは一般的に行われているのでしょうか?

一定規模以上の会社なら、社内に経理課などがあり、税理士には相談しつつもある程度自らの判断で処理されていることも多いと思います。

その場合には税理士変更しても自分らの経理処理がどのように行われているのか自社で把握されているでしょうから、何の問題もありません。

問題なのは、自らで会計ソフトの入力を行わず、税理士事務所に経理のほとんどを任せている等、税理士に経理の依存度が高いケースでしょう。

税理士が代わると、きちんと引継ぎをしないと何か問題が起こるのでは?と考える経営者もおられるかもしれません。

ただ、結論的に言うと、先も述べましたが、私の感覚では一般的には新旧の税理士が顔をつきあわせての引継ぎなどは行われていないと思います。

それは、やはり両者の間にお客さんを「奪った・奪われた」という感情的な問題があるからかもしれません。会いたくない、会うのが気まずいという思いが両者にあるという面もあるでしょう。

でも、もっと大きな面からみれば、直接引継ぎを受けなくても、税理士レベルの能力があれば、前の帳簿・決算書・届出書の写し等があれば、どうにか引き継ぐことが出来るからです。

どうしても昔の経緯がわらかないときは、経営者等会社の方にどうしてこういう処理をしたのか(しているのか)を聞けばなんとかなります。

よって、私の方から前の税理士に対し直接顔を合わせての引継ぎをも求めることもないですし、逆に求められたこともない気がします。

ただ、どうしても伝えないといけないこと、またどういう考え方でこういう処理をしているのか等を伝えたいことについては、引継書をつくり、私の元を去って行く経営者にお渡しするようにはしています。

今までお客様としてつきあっていただいた方に、意地悪をしても仕方がありません。また後日、私自身の責任を問われないためにも、再確認しておいた方がよいことは、過去の経緯等も含めて簡単にまとめるようにはしています。

3.会計データの引継ぎについて

では、会計データの作成を会計事務所に依頼していた場合、過去の会計データを前の税理士からもらうよう、経営者に依頼することは行われているのでしょうか?

通常は、会計入力自体を会計事務所に依頼されている場合、会社側には読み込むソフトがないため、会計データは会社自体の手元にないことが多いです。

私の知る限り、この会計データの引継ぎもあまり行われていないと思います。その原因の一つが、前の税理士に対する気まずさもあるでしょう。ただ会計事務所により使っている会計ソフトも様々であるということも大きいと思います。

会計ソフトは、主なものだけでも10種類?ぐらいあるのではと思います。そうであれば、会計データをもらっても自分の事務所では使えないことが多いと考えられます。

そうであるなばら、もらっても使えない可能性が高いものは請求しないということ、また会計データをもらわなくてもなんとかなることも大きな理由でしょう。

ただ、顧問契約していた期間の会計データがほしいという会社がたまにあります。(新しく契約する税理士に言われた可能性がありますが)この場合、前の顧問税理士が会計データの引継ぎを拒否したら、法的には問題あるのでしょうか?

平成25年にそういったことが争われた裁判があります。東京地裁は、会計事務所が作成した会計データはその作成した税理士に帰属するものとして、会計データの引き渡しをも求める依頼者側(会社側)の訴えを退けています。

よって、現時点での裁判所の判断では、前の税理士は会計データを会社及び新しい税理士に引き渡ししなくても問題がないと考えられています。

私の場合も、一度だけ会計データを求められたことがありました。その時は、引き渡ししたくないというのが正直な気持ちでしたが、最終的には一部加工してお渡ししました。

というのも、会計データを渡すと、自分が培ってきた入力の方法・ノウハとか、そういう部分も外部に出て行ってしまうことになるからです。(会計ソフトによるかもしれませんが、私が使っている弥生会計では出て行ってしまいます。)

これは、個別相談などでも有料で教えているノウハウなので、新しい会計事務所にそのまま引き渡したくない気が正直ありました。

ただ、最終的にはデータを加工して、そのノウハウは削除しデータのみにして、引き渡しました。解約の経緯について少し納得できないこともあったので、必要以上に前向きに引継ごうという気になれなかった面もあるのですが・・・。

4.最後に

以上、税理士の引継ぎについて述べてきました。それほどハードルは高くないと思いますので、どうしても納得出来ないことがあれば、税理士を変えることもあると思います。

ただ、やはり理想は、アドバイスを求める税理士を探すのなら長くつきあえることだと私は思っています。長期間つきあえば、細かい情報、考え方もわかってくるので、適正なアドバイスをしやすくなるのも事実だと思います。

よって価格だけでなく、自分が何を税理士に求めるか明確にしたうえで、長期的につきあえるかもと思った税理士を選び、契約することをお勧めします。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら