みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。
前回の記事で、平成29年税制改正により、平成30年より変更となる、配偶者控除・配偶者特別控除の取扱についてお伝えし、税法上のパート収入の壁は、103万円から150万円になる旨確認いたしました。
今回は、税法上以外で壁となる社会保険の扶養の130万円の壁、企業などが支給する配偶者手当などについても触れ、今回の税制改正の影響を私なりに深めて考えてみたいと思います。
1.社会保険の扶養の壁は130万円
(1)年金
会社で加入している社会保険と言えば、年金と健康保険があります。年金については、会社員である厚生年金の(通常は)夫である被保険者(第2号被保険者)の配偶者は、国民年金の第3号被保険者となれる場合があります。
その場合、会社員の被保険者である夫が夫自身の保険料を払うことで、その配偶者も国民年金の保険料を自動的に支払ったことになります。(厚生年金が全額負担するからです。)
この第3号被保険者になる条件は、配偶者(妻)が20歳以上60歳未満で年収が130万円未満であることが必要です。(日本年金機構のサイトはこちら)
ここで、いわゆる130万円の壁が出てきます。年収が130万円以上になると、第3号被保険者となることが出来ません。
この場合、配偶者(妻)は。国民年金の第1号被保険者となり、自分自身で国民年金保険料を支払う必要があることとなります。平成29年度は、16,490円/月の保険料ですので、年間で16,490円×12月=197,880円を自分の収入から負担しないといけなくなります。
注)ただし妻が勤務先で、正社員とほぼ同様の時間働くケースで、その職場が厚生年金保険の適用事業所で働いている人は、給料から天引きされ、会社と折半で保険料を支払う厚生年金に加入することになることになります。
(2)健康保険
健康保険(協会けんぽ)に加入している会社員(通常は夫)の配偶者は、年間収入が130万円を超えると、その夫が加入している健康保険の扶養者となることは出来ません。(日本年金機構のサイト)よって、その配偶者自身が、市町村の国民健康保険に入る必要が生じるということです。
その保険料はいくらぐらいになるのか?大阪市の国民健康保険料を例にあげて考えてみます。こちらの大阪市のサイトで、国民健康保険料の額をExcelのシートで算定出来るようになっているので、試してみました。
年収150万円まで働いた場合、介護保険料がかからない40歳未満の方の場合で、年間129,299円、介護保険料も支払う40歳以上の方の場合で、年間162,905円の国民健康保険料がかかることになります。
注)ただし妻が勤務先で、正社員とほぼ同様の時間働くケースで、協会けんぽの適用事業所で働いている人は、給料から天引きされ、会社と折半で保険料を支払う厚生年金に加入することになることになります。
(3)まとめ
平成30年より、パート収入150万円まで働いても、配偶者特別控除により、配偶者控除と同じく38万円、夫の所得から控除出来るようになります。
しかし、実際150万円まで働くと、自分で国民年金保険料197,880円、及び仮に大阪市にお住まいの場合、国民健康保険料129,299円(又は162,905円)を払わないといけないこととなります。
よって手元に残るお金は、パート収入で150万円まで働くなら、130万円までにとどめておいた方が、結局は手取りは多くなることになってしまいます。(さらに納税額も150万円-130万円=20万円の所得が増えたことにより、20万円に所得税5%及び住民税10%の合計15%を乗じた3万円分、納税額が増えます。)
2.企業が賃金制度として設けている家族手当・扶養手当について
公務員や比較的大きな企業にお勤めの会社員の場合、「扶養している」配偶者がいる場合、家族手当や扶養手当などの名目で、福利厚生的に給料に上乗せがされる場合が見られます。
その場合、こちらのサイト(8ページとナンバリングされているページです。)を参照すると、「扶養している」配偶者と認定する会社で定めている基準がわかります。配偶者の年収が配偶者控除の適用を受ける103万円以下としている場合が最も多く、ついで社会保険の扶養となれる130万円未満としている場合が多いとのことです。
また、その手当の額は、民間の支給月額で月13,000円程度が多いとのこと。(こちらのサイトで1べージとナンバリングされているページです。)よって、103万円や130万円以上働くと、13,000円×12月=156,000円の夫の給料についてくる手当を失う可能性があります。
このあたりの課題については、この手当を廃止し、別の手当にするなどの改良を行うケースも社会全体としては増えているようです。ただまだこのような手当がある会社にお勤めの方の配偶者は、手当の額にもよりますが、103万円以上又は130万円以上のパート収入を稼ぐことに躊躇されるケースもあると思います。
3.まとめ
以上、税制上は、103万円の壁が150万円の壁になったことで、50万円近くも壁が動いたことになりますが、現実的にはパート収入130万円の壁が今後は大きな壁になりそうです。個人的には、税法も150万円の壁をつくるのではなく、130万円の壁にするような制度にした方が、社会保険と共通になり、むしろわかりやすかった気もします。
ただ、政府としては、女性がより活躍する時代をみせるためにも、壁が大きく動いたことを示す必要があったのでしょう。実質的には130万円の壁が残るとしても、103万円の壁が130万の壁に移っただけでも、助かる人は多いかもしれません。その部分についてはプラスに考えたいと思っています。
今西 学
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