正しい申告をせざるを得ない「税理士」が心苦しく思うとき

こんにちは。今西です。

先日も述べましたが、確定申告期限が到来し、平成28年の確定申告業務も無事完了いたしました。
今年の確定申告業務でも感じたことがあるのですが、税理士業務を行っている中で、税理士として悩ましい事態に直面することがあります。それは特に新規のご依頼をいただいたケースでおこります。

過去にご自分で申告されていた個人事業主の方が、税理士にご依頼していただく際には、ご自身で確定申告に費やされていた時間を税理士に委ねることで事業に専念出来るというメリットがあり、そのメリットを意識してご依頼していただくケースも多いと思います。
と同時に、税理士に依頼するなら、やはりいくぶんかでも税理士の知恵を使って、節税してくれればと思うのが自然であり、私たち税理士も専門能力を駆使して、適正な節税をし、税理士に依頼していただく付加価値を感じてほしいと思っていると思います。

ただ、ご本人の悪意ではなく、知識不足から、間違った税法の処理を思いこんで、結果として税理士に初めて話を聞かれて間違いに気づきがっかりされてしまうケースもあります。例えば、よくあるのは、所得税の医療費控除の適用についての考え方です。医療費控除は、「治療のための費用」が対象ですので、原則として人間ドック代や検診代は医療費控除の対象外となっていますし、また、入院されたときの個室に入ったときの差額ベッド代は、原則として医療費控除の対象外となってしまいますが、それらの適用があると思い込んでおられ、領収書を持ってこられるときがあります。
私の方から、状況を確認させていただいたうえで、やはり適用外となるときは、「ごめんなさい。医療費控除の対象外となってしまい、結果として、それ以外の領収書をせっかく集めていただいたのですが、10万円を超えていないので、医療費控除は適用できません。」とお伝えせねばなりません。
また個人事業主の必要経費として、「所得税」の納付額を経費に入れておられる方がおられますが、「所得税は事業に伴い、つまり売上をあげるために発生するものではないので、残念ながら経費にはなりません」とお伝えすることになります。

次回以降は、はじめからそのような考えを共有していただけるのですが、初回のときは、「知り合いが検診費用を医療費控除の対象としたが、何も税務署から指摘がなかったのに駄目なの?」や「所得税を必要経費にしている人もいますよ」なんて、言われることがあります。おそらくご自身で申告されていたら、それらを医療費控除の対象としたり、経費としたりして申告されたことでしょう。医療費控除は領収書を提出するのが原則ですが、電子申告すれば領収書を税務署に提出する必要がないので、「実地の税務調査」がない限りはそのまま通る可能性もあるでしょう。

それでは個人事業主で実地の税務調査は多いのかと考えると、法人と比べれば、実地調査はそれほど多くないのが現状かもしれません。(税務署の職員の方の人数を考えれば、仕方のないことでしょうし、そのために公務員を多くするのもかえって問題があるとも思います。)

そうすれば、結果として、上記のようなケースは自分で申告していれば誤った処理のまま、申告・納税が問題のないように完了していたのに、税理士に見てもらった結果、報酬を請求されるうえになおかつ納税額が増えてしまうことも現実的にはありうるかと思います。そう考えると、お客さまに、「医療費控除の対象外」、「経費にはなりません」とお伝えする際には、心苦しく思うときもあります。

ただ、税務署に「注意指摘される、されない」という観点からだけで、税務申告することができないのが、税理士という職業です。税理士は、正しく申告するというのが大前提であります。なぜなら、税理士は課税の公平性を守り、正しい申告をするため、「独占権限」(簡単にいうと、他人の申告業務をお手伝い出来るのは税理士のみという特権を与えられていること)を国から与えられているからです。

もちろん、グレーゾーンは納税者であるお客さまが有利になるよう、出来るだけ努力し、申告するようにしますが、法律上どうにもならないこともあります。私自身、心苦しい時もありますが、好意的に解釈してもどうしても否定せざるを得ないときは、その旨お伝えし、正しく申告していただくようにしています。

もちろん、税理士として、その方の申告を受任すれば、無駄な税金を払わないよう節税について、全力で考えますが、結果としてご依頼いただきながら、トータルであまり節税にならないケースも正直ないとは言えないと思います。喜んでもらって、報酬をいただきたいというのが自分の税理士業務に対する取り組みなのですが、年間通してお付き合いする顧問契約の方ならともかく、申告業務だけのご依頼の方の場合は期待に応えられないこともありえます。

今年も新規のご依頼をいただきました。その方は上記の医療費控除の勘違いなどをやはりお持ちで、せっかく医療費の領収書を集めていただいたのに、私が指摘したことにより結果として医療費控除の適用が出来なくなってしまいました。納得していたいだいたのですが、お伝えするときは少し心苦しかったです。
ただ、その方は、従業員を一昨年から雇いはじめたことから、申告書のチェックの時点で、「所得拡大促進税制」が使えることに気づきました。(私の事務所では「個人事業主」の方では初めてだったのですが・・・)結果として税額控除が出来、大きく税額を削減することが出来ました。専門家としての付加価値を出すことで、喜んでいただき報酬を得ることができ、よかったです。正しい申告をしながらも、何とか専門家としての知恵を使って節税が出来るよう、今後も全力をつくしていきたいと思っています。

 

(編集後記)
昨日は、侍ジャパンの準決勝、6回ぐらいからずっと見てしまいましたが、結果は残念でした。不慣れなグラウンドで、日本の内野手は守りにくかったと思います。でも結局は打てなかったのが敗因だと思います。やはり現在の日本人メジャーリーガーと同様、野手はなかなかメジャーの投手相手に活躍できないのが現状なのだと実感しました。若手のメンバーも多かったので、次回大会での雪辱に期待したいです。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら