個人型401K(確定拠出年金)の概要と節税になる仕組み

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。

先日、顧問先のお客様にも聞かれたのですが、制度改正があったこともあり、個人型401Kが今、脚光を浴びています。今回のブログでは、その概要と節税の仕組みについて、少しまとめてみました。

1.所得税・住民税の課税の仕組み

まずは、節税になる仕組みを知るために所得税・住民税の課税の仕組みです。分かっている方はここは飛ばして下さい。

(1)1年分の所得の合計額を求める。

所得税の課税は、所得を、「利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡、一時、雑」の9つの区分にわけ、それぞれの所得ごとに所得金額を出して、最終的にはその一年間の合計の所得金額を求めるところから始まります。(例えば、給与所得は、「給与収入-給与所得控除額」などの所得区分ごとに所得の計算が決まっています。)

なお、退職金の退職所得、株式譲渡、土地・建物の譲渡所得など、この合計額に入らず、分離課税と言って、所得ごとに単独で税金を計算する所得もあります。(住民税も基本的に同じです。)

(2)所得控除額の合計額を計算します。

所得控除額は、人的控除(人に対する生活上の控除。配偶者控除や扶養控除・障害者控除など)と物的控除(社会保険料控除・生命保険料控除・小規模企業共済控除等)があります。

(3)(1)-(2)=課税所得を計算し、税率を掛けて税金を求める

(1)所得の合計額から(2)所得控除額を差し引き、課税所得を計算し、そこに所得税は所得の高低に応じて5%~45%の超過累進税率(住民税は一律10%)で税率を乗じて、所得税額(住民税額)を算出します。

(4)(3)から税額控除を差し引く

(3)でも求めた額に税額控除額(住宅ローン控除が典型的)があれば差引き、最終的な年間の所得税(住民税)を計算します。

2.401Kの窓口となる金融機関(運営管理機関)の選択 及び 掛金拠出による節税額

個人型確定拠出年金の掛金を拠出し、拠出先の金融機関が用意している投資信託などの価格が変動する商品や、定期預金などの元本が保証されている商品の中から、自分の運用スタイルに応じた、掛金の配分を決めて運用していきます。

金融機関は、SBI証券、マネックス証券などのネット証券が力を入れていますが、野村證券などの大手証券会社や都市銀行のりそな銀行も力を入れています。力を入れているところは、金融機関の口座管理手数料が低かったり(かからなかったり)、選択出来る商品(投資信託の本数)が多かったりします。

ちなみに手数料については、SBI証券と楽天証券が一番安く、金融機関としての口座管理手数料は徴収していません。ただし、どこの金融機関を選択しようと、国民年金基金連合会に支払う103円と拠出した掛金である運用資金を管理する信託銀行に払う報酬64円の合計167円は毎月かかります。

この毎月の167円の支払とは別に、金融機関ごとに口座管理手数料がかかる場合があります。よって、現在の低金利時代では、元本保証型の商品を預け入れると、預金利息より毎月の支払額の方が間違いなくかかります。よって、掛金拠出額の合計額は、少しずつマイナスになっていきますが、後ほど述べるようにそのマイナスを補える節税効果があります。

毎月の掛金拠出額は、自営業は68,000円、会社員は会社で確定給付企業年金(DB)及び企業型確定拠出年金がないときは、23,000円になります。(詳細はこちらを参照ください。)

掛金は、毎月拠出する必要がありますが、拠出する掛金の額、毎月の掛金で拠出する運用商品については、随時変更することが出来ます。

3.401Kの拠出した掛金全額が所得控除出来ます。

401Kに拠出した金額は、「小規模企業共済等掛金控除」として、拠出金全額が上記1(2)の所得控除額になります。これは、国民年金や厚生年金の保険料を支払った時の社会保険料控除と同じく、全額所得から差し引けるということです。

生命保険料の控除額は年間でどれだけ保険料を掛けても年間12万円であることを考えると、自営業の場合は、年間84万円まで、会社員の場合も年間276,000円まで全額控除出来るのはかなりの税金上の優遇措置であると言えます。

節税になるのは、1(2)の所得控除額が大きくなると、当然1(3)の課税所得が小さくなりますので、その「掛金相当額×ご自身の所得による税率」の所得税とその「掛金相当額×10%」の住民税の合計が節税になるということになります。

4.401Kの制度趣旨と税制の優遇

少し話しがそれすかもしれませんが、401Kは老後資金を自分で蓄積することを応援するためのものです。よって、上記のように、老後のための掛金を掛けただけで、全額が所得から控除され、節税効果を得ることができます。

ただし、その制度趣旨は、よく言われる401Kのマイナス面にもつながります。それは、掛金を掛けた金額は、60歳までは解約することが出来ません。よって、掛金として拠出した金額は、60歳まで手元に戻すことが出来ないのです。この点をふまえたうえで掛金を拠出してください。

(参考)確定拠出年金法第一条
この法律は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため、確定拠出年金について必要な事項を定め、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

5.運用益の非課税

先述しましたが、掛金は、投資信託又は元本確保型の商品で運用するのですが、その運用益も非課税となります。この非課税は、NISAにも適用されているもので、売却価額から取得費を引いた運用益に対して、日本の税制では所得税15%及び住民税5%の合計20%の税金が徴収されるのですが、401Kで生じた運用益、及び利息については、税金は徴収されません。

例をあげてみます。当初、日本株の投資信託に毎月掛金を掛けていました。そしてあるとき、投入した掛金の合計が100万円になったとき、日本株が右肩上がりに推移し、運用により50万円利益がでて、時価が150万円になっていたとしましょう。

このとき日本株は上がりすぎたので、この日本株投資信託を全額売却して、そのお金で定期預金の運用に変更し、また日本株が下がったら資金を振り向けて投資しようと考えたとします。

その場合、今持っている日本株の投資信託を解約して、そのお金で定期預金を購入することになるので、本来は、解約時に利益50万円が実現するため、その20%である10万円分税金を徴収されることになります。
よって、定期預金に預け入れる金額は、150万円-10万円(税金)=140万円になります。

しかし、401Kでは、運用益は非課税になるので、資金を振り向ける定期預金へ150万円分預入出来ます。この運用益の非課税により、401Kの投資資金も増えることになり、将来の受取額も増える可能性があります。ちなみに、預金利息も非課税になります。

ただし、値動きの激しい個別株を購入するわけではなく、投資信託の購入がベースとなるので、投入した掛金の運用成果が、掛金の3倍や4倍になることは考えにくいです。

運用商品の選択によりますが、掛金の50%も増やせたら、大成功というところでないでしょうか?そう考えると、401Kでは運用益が非常に大きくはでにくいと考えると、この運用益の非課税は、3の掛金全額の所得控除ほどメリットは感じにくいかもしれません。

6.年金として受けとるとき

先ほども申し上げましたが、途中解約は出来ません。ただ、途中で掛金を拠出した本人が死亡した時は、掛金を積立し、運用した金額が死亡一時金として遺族に支給され、障害等級1級・2級に該当すれば、障害給付金をその時点から受け取ることが出来ます。それ以外は、基本的には60歳以降に老齢給付金を受け取ることになります。

国民年金や厚生年金と違うところは、あくまで個人資産を分別管理して積立をし、積立金の運用結果の金額がそのまま受け取れるという点です。よって積み立てた401Kの運用資産の給付をすべて受ければ、給付は終了となります。

掛金を拠出出来るのは、60歳までで、それ以降も今まで積み立ててきた掛金を運用することは出来ますが、遅くとも70歳になるまでに受け取りを始める必要があります。

受け取り方法は、年金受け取りが基本で5年~20年の範囲で受け取らないといけませんが、一時金で一括で受け取るこもも出来ます。

7.受け取るときの税金

掛金拠出時に全額所得控除されており、途中の運用益は非課税なのですが、受け取るときに、受取額全額に対して税金がかかります。(掛けるときに所得から控除しているので、運用益だけではなく、もらった金額全額が課税対象になります。)

よって、自分が累計で800万円掛けて運用益を出し、最終的に1,000万円になったとしたら、差益200万円だけが課税対象になるのではなく、1,000万円全額が課税対象になります。

老齢給付は受け取り方法によって、税金の種類が変わります。一時金で受け取るときは、退職所得になり、年金でもらうときは、雑所得になります。

ただ税金だけを考えると、一時金で受け取った方が一般的に有利です。退職所得は、受け取った額から退職所得控除(20年までは1年あたり40万円×年数、それ以降は800万円+1年あたり70万円×20年を差し引いた年数)を控除し、さらに1/2を乗じて算出した額で税率を掛けますので、税金面で優遇されているからです。

自営業の方の場合は、会社から退職金をもらうことがないので、一時金受取額がこの退職所得控除額の範囲内なら、結局、戻ってくるとき(出口)も課税されませんし、超える場合も超えた部分に1/2を乗じるので少ない課税ですむことになります。

会社員の場合は、退職金を会社からもらうので、退職所得控除額を会社の退職金で使ってしまうケースもあり、どのようにもらうのかのプランも慎重に考えないといけません。(詳細を知りたい方はこちらのサイトが参考になります。)

8.まとめ

以上、個人型確定拠出年金の掛金拠出から老齢給付を受け取るまでの大まかな流れと、税金の仕組みを述べてきました。いろいろな論点があるテーマなので、また機会をみて、401Kについていろんな面から述べてみたいと思います。

会社員の方は、厚生年金があるし、掛金の額も上限が低いし、途中解約出来ない事もあるので、NISAなどとの比較により、この制度を利用するか検討されればいいのかなと思います。

ただ、自営業の方は、国民年金だけでは将来の生活が難しいので、こういった制度を利用して、将来の資金を蓄積していく必要は大きいと思います。

最後に、(会社員の方は関係ないですが)自営業等の国民年金だけの加入者が、国民年金を滞納していたり、また国民年金の保険料の免除をうけている場合は、この個人型の401Kに、通常の保険料を納めるまで、掛金を拠出することが出来ません。あくまで国民年金の上乗せであるからです。ご注意ください。

(編集後記)

個人型確定拠出年金の愛称を「iDeCo(イデコ)」と言います。
英語表記の individual-type Defined Contribution pension planの単語の一部から構成されているとのことで、公募によりきまったとのこと。難しそうな英語の略称ですよね。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら