開業当初はじめて税務調査に立ち会ったときに感じたこと。

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。

私が保有している税理士資格には、租税に関する業務について、3つの独占権限が与えられています。

1.税務代理
2.税務書類の作成
3.税務相談

の3つです。この3つの業務については、たとえ無償であっても税理士以外の法人・個人が行ってはいけないことになっています。

このうち一番わかりにくいのが、一番目の税務代理という業務でしょう。税務代理の正確な定義は、こちらの税理士連合会のサイトを参考にしていただければと思います。

この税務代理、私なりに簡単にいえば、「税務署からの問合せ・税務署が確認したい不明点について、依頼者に代わり、事情を説明したり、意見を述べたりすること」と言えると思います。

この税務代理行為の一番典型的なものは、税務調査に際して立ち会いし、税務署の担当者との折衝を行うことでしょう。

1.はじめての税務調査立会

私が、税理士資格をとったのが41歳のときなのですが、それでももう10回前後、税務調査の立ち会いを行ってきました。はじめて税務調査に立ち会ったのは、独立開業してすぐの約7年前のことです。

まだ、開業してまもなくで顧問先がほとんどないときでした。知り合いの行政書士の方の紹介で、私の顧問先ではない個人事業主のご依頼で、ご自身で作成・提出された確定申告書の税務調査に、税務調査から立ち会うということになりました。

申告書は税理士が作成したものではなく、ご自身で作成されたもので、結果的に申告書に計算誤り等もあり、いくつか修正をすることになってしまいました。数字の計算ミス、申告書の記載ミス等は、抗弁することも出来ません。税務署の調査担当者は一人で来られていたのですが、指摘通りに修正し、抗弁出来ない点については、協力的に物事を進めました。

ただ、一点、依頼者が税務署の修正するべしという指摘に納得出来ないことがありました。

それは依頼者の父親が所有している物件を事業用の事務所として使っておられ、父親に支払うべき家賃を経費計上されていたのですが、次のような事情がありました。

依頼者本人は、親族間なので家賃を毎月支払うことはせずおらず、年に一回帰省されるときにまとめて現金で払っていたと事実関係を説明されました。

しかしながら税務署側は、親子間で賃貸契約を結んでいる事実はなく、帰省した時に家賃相当額を支払っていたとしても、それは生活費の贈与であり、家賃を支払ってるとは認められない、よって申告書で経費として計上されている地代家賃の経費計上額を全額否認するというものでした。

はじめから顧問契約をしている方なら、税務署側に疑われないように、お父様との賃貸契約書を文書でしっかりと作り、また家賃の支払は証拠の残る銀行預金を使って払っていただく等のアドバイスが出来たと思います。が、今回は既に起こった事実・処理に対して、税務署側に納税者の主張を伝える必要がありました。

結局、はじめは全額を否認されていたものを、2/3程度は経費として認められ、残り1/3だけ経費とて否認されるというところへ交渉でもっていくことが出来ました。
(すいません。概略しか書いていないので、わかりにくいいかも知れませんが、言いたいのは次からなので、ぼんやりとわかっていただければ大丈夫です。)

2.税務署との折衝で感じたこと

上記の件については税務署側は経費性を強く否定され、一方、依頼者も納得せず、はじめての税務調査で難題に巻き込まれた気分でした。

顧問契約をしていないこともあり、本当の事実は、私にもわかりかねる部分もあったのですが、やはり依頼者の言葉を信じ、主張を認めてもらうよう交渉をするのが、税理士としての役目だと考えていましたし、今でも考えています。

当初は、税務署の担当官に「本人が間違いないと言っているので、なんどか認めてください」とお願いしていたのですが、税務署も主張を曲げません。結局、考え方を論理的に整理し、なんとか認められるよう意見をぶつける決意をしました。

私は、25歳から34歳まで神戸市役所で、地方公務員の事務職として働いておりました。行政のことも多少はわかっているつもりですし、多くの地方公務員の方とも同僚としてつきあってきました。税務署の職員は、国家公務員という違いはありますが、そのときの担当者はそれほど威圧的な人でもなく、お話の出来る方でした。

そんな背景をもった私でも、恥ずかしながら税務署の担当官に意見をぶつけるときはすごく緊張しました。大げさに聞こえるかもしれませんが、背後に国家権力という大きなものを背負っている税務署側と個人事務所の一人の税理士が戦いをしているようで、少し圧倒されている思いを抱きました。

でも税務代理なので、本人の主張をきちんと税務的な論点から、主張しないといけません。3分程度の時間だと思うのですが、相手と冷静に会話するというより、とにかく一方的に(怒鳴ったわけでは決してないのですが、少し声が震える感じで)ただひたすらにしゃべり続けました。

なんとか主張が一部通って納税者の方にも喜んでもらいよかったのですが、税務代理も大変だなと実感したものです。

なお、その依頼者の方は直後に法人成りし、法人で事業をされるようになり、顧問契約を結んでいただき、現在もよき顧問先としてお付き合いさせていただいています。税務代理として税務調査に立ち会うことは、税理士を評価する一つのポイントになりえます。

3.その後の税務調査

 その後は、何度か税務調査の経験をしてきましたが、すべて自分の顧問契約している顧問先の調査で、調査される事業主のこともわかっているし、また考えれるリスクは事前にできる限り取り除くようにしていたので、大きな論点で税務署側と見解が異なるということはありませんでした。

ただ、税務には、法律の条文ではわりきれないグレーゾーンがどうしてもあります。

また務調査で指摘されることをおそれて、あまりにも保守的に申告書類を作成することは、結果的に依頼者の利益を損なうことにもつながります。よってある程度証拠をそろえ、かつ理屈を整理し、納税者有利に考えて申告することもあります。

私自身は、税務署側と円滑に交渉して、税務調査を終わらせるのが一番だと強く思います。ただどうしても税務署側と見解の相違があるときも出てくると思うので、そのときは主張すべきところは主張しないといけません。

よって今後も税務署と意見を戦わせることもきっとあるでしょう。そのときは、前回の経験をふまえ、冷静に論理的にきちんと対応出来るよう努めていきたいと思っています。

 

(編集後記)

今、世間を騒がせている加計学園の問題で、前事務次官が政府に対して堂々と反論しているのをテレビニュースで見ました。

この事件の真偽は置いておくとして、私も堂々と腹を据えて、税務署に主張すべきことがあれば、ひるむことなく主張出来るよう、税務や会計の勉強に邁進するともに、心身とも強くなるよう日々磨いていかないとと、そんなふうに感じました。(おかしなニュースの見方かもしれませんが・・・)

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら