みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。
個人の自営業者・フリーランスの方は、「給与所得者は税金が優遇されている、不公平だ」という言葉を聞くことがあります。一方、給与所得者は自営業者の方は収入が把握されにくい仕組みなので不公平と思われているかもしれません。
それぞれの認識は合っているのでしょうか?
1.給与所得者と給与所得控除額
会社で源泉徴収されているので、あまり納税している意識がないかもしれません。たたし、年末調整の源泉徴収票は見られることが多いと思います。
その源泉徴収票には、給与の「支払金額」と「給与所得控除後の金額」という記載があります。給与所得者は、必要経費の把握を通常されていませんが、それでも収入が所得になるのではなく、収入から給与所得控除額を差し引いて給与所得となります。「給与所得=給与収入-給与所得控除額」です。
それでは、「給与所得控除」とは何でしょうか?現在、有力な考え方は、給与所得控除の1/2(半分)は、「勤務費用の概算控除」そして残りの1/2(半分)は、「他の所得との負担調整」ということです。
前者は勤務するためのスーツ代、勉強のための書籍代等、仕事をしていくにあたりかかる一定の費用ということでよくわかります。しかし、後者の意味合いが正直私もよくわかりませんでした。今回改めて調べてみると国会図書館の資料で、記載されているところがありました。
「他の所得との負担調整」とは、給与所得の担税力が低いことに対する配慮である。この背景には、給与所得者の勤務をめぐる事情がある。税制調査会の解説によれば、給与所得者は、「使用者の指揮命令に服して役務提供を行う」ことから、その雇用関係に不安定性があり、また、勤務に際して空間的・時間的拘束を受ける等の負担を余儀なくされている。
一方、事業所得や資産所得は継続的・安定的なものであり、これらに比較すると、給与所得は、担税力が相対的に小さいと考えられる。このような事情に斟酌を加えることも、給与所得控除の機能であると説明されている。
安定していると言えない個人事業主の立場からみれば、給与所得を生じる会社員は雇用関係が不安定であると言われると少し疑問があります。
ただ、企業の業績により自分のがんばりとは別に減給があったり、急に能力給を導入されたりすることもあろうし、また現代では正社員じゃない人も増えているし、税金を負担する力が弱いといわれれば、そういう面もあるかもしれません。
なにより、資産所得、つまり例えば株を動かして得る所得と比べたら、税金を払う力はあきらかに弱いと言えるでしょう。株の譲渡による所得や配当による所得は、利益の一部を税金でもっていっても、それほど生活には困らないかもしれませんが、給与所得はそういうわけにはいきません。そういう意味で一定額の給与所得控除額をして、ある程度税金の負担を減らす必要があるのかもしれません。
2,個人事業主・フリーランスの事業所得は必要経費を実額控除
個人事業主・フリーランスは、収入から必要経費を引いた額が、事業所得になります。正確に言うと、青色申告といって、帳簿をきちんと付けた人には、65万円か10万円の青色申告特別控除額がさらにマイナスできます。
よく、個人事業主・フリーランスは、所得が捕捉されにくく、所得を正確に申告していないといわれますが、預金振込で売上の入金がある個人事業主・フリーランスも多く、そのような人達はなかなか収入をごまかそうと思っても、預金に取引記録が出ているので、実際にはごまかすのは難しいと思います。完全に現金商売の人は、やろうと思えば多少は出来るかもしれませんが・・・。
ただ、確定申告の相談会場で出務していると、所得のあまりない事業者は、税理士と契約をしていないことも多く、そういう方は意図的か、税法を知らないことからくる誤りなのかわかりませんが、結果的に所得の少ない申告をされているケースもあるように思います。
そうであるにもかかわらず、税務署もどちらかというと、大きな所得を有する個人の申告の方を重点的にチェックし、必要があれば税務調査にも入る一方、所得の少ない事業者の確定申告はあまり重点的にチェックされていないような気がします。
結果的には少ない申告でずっと通っている人もいるかもしれません。税務署は、限られた時間で大きな不正をただす必要があるため、やむを得ないことかもしれませんが・・。
そういう面では、ガラス張りで所得が把握される給与所得者からみたら、きちんと申告していないという思いをもたれるのも、わからなくはありません。
3.まとめ
私自身は、会社員・公務員を約15年経験し、その後自営業を7年ぐらいやっているので、会社員が自営業者の収入が補足されていなくておかしいという気持ちも、自営業者が給与所得者は給与所得控除があるので、領収書もなく収入から給与所得控除額を差し引いて、所得を少なくしているのでうらやましいという気持ちも両方わかります。
ただ現時点の時代の流れとしては、企業にかける法人税を減税する一方、個人にかける所得税・相続税は増税される方向です。
よって、給与所得者の給与所得控除額も、将来減らされる方向で検討されるかもしれませんし、個人事業主もマイナンバー制度がはじまったことにより、所得はより把握されやすい方向になっていくでしょう。(現金商売はマイナンバーもあまり関係ないですが・・・)
隣の芝生は青く見えると言いますが、おたがい、他の立場の人を攻撃・批判して対立を煽るのではなく、大局的にどういう税制が公平でいいのか考えていく必要があるのかもしれません。ただ、「公平な税制」とはいうのはたやすいですが、実際には「公平」とは何かが難しいのですが・・・。
今西 学
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