みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。
会計ソフトへの入力をはじめられる場合、簿記を知っている方は、比較的早く会計ソフトへの入力業務もうまくこなせるようになります。そのような方でも、「消費税がかかる取引」か「かからない取引」かという判定に関しては、なかなか理解出来ないことも多く、悩まれてしまうケースも多いです。今回は、「消費税がかかる取引」、「かからない取引」のとりあえずのイメージをとっていただけるよう、基本的なところをまとめてみたいと思います。
1.消費税がかかる取引
次の四つの要件を満たした取引が消費税がかかる取引とされています。
①事業者が
②事業として
③対価を得て行われる
④資産の譲渡 及び 貸付 並びに 役務の提供
税理士試験の消費税法の第一回目の授業で教わる論点です。難しいようですが、今回何度も見返していただくことになりますので、まずは、しっかりと4要件をご確認ください。
2.消費税の対象外となる取引について
では、消費税の対象外となる取引、つまり消費税がかからない取引はどのようなものでしょうか?以下、いくつか例示してみます。先述の4要件のいずれかにあてはまらない取引です。
(1)給与の支払い
会社員のお給料は、役務の提供をして対価が払われるので、③と④は満たしていますが、会社と従業員は雇用契約を結び、労務を提供するので、従業員は事業者ではなく、事業として働いているのではありません。よって、①と②を満たしておらず、給料に消費税はかかりません。
(2)香典・お祝い金・寄附金
香典やお祝い金・寄附金は、何かをしてもらったことの対価として払うのではありません。よって③と④を満たしていません。①法人である事業者が②事業の必要上、支給する香典やお祝金・寄附金であっても消費税はかかりません。
(3)保険金
保険会社が払う保険金も、契約者が何かしてくれたことの対価として、保険会社が支払うものではないので、③と④を満たさず、消費税の対象外取引ではありません。
(4)損害賠償金
心身又は身体に加えられた損害に対して支払う損害賠償金は、③と④を満たさず、消費税の対象外の取引です。
(ただし、「事務所の明渡しが期限より遅れた場合に賃貸人が収受する損害賠償金が賃貸料に相当する場合」のように、実質的に契約外の期間の事務所の貸付の対価として払われる損害賠償金等、消費税がかかるケースはありますが、今回は深くは触れません)
(5)株式の配当金
株主が配当をもらうのは、株主としての権利として会社に残った利益の一部をもらうのであり、お金を出資したことの直接的な対価としてもらうのではないため、③と④を満たさず、消費税は課税対象外となります。
消費税がかからいないものの主なものは、上記を覚えていれば十分でしょう。(詳細は国税庁のサイトもご参考にして下さい)
3.他にも消費税がかからない非課税取引があります。
(1)弱者保護の観点から消費税をかけない取引
ここまで述べてきて、不思議に思われた方もおられるかも知れません。他にも消費税がかからないものはあるのではと。そうです。他にもあります。例えば、「病院で社会保険診療を払うとき」、「居住用家賃の賃貸料を払うとき」、は消費税はかかっていません。消費税が5%→8%になったときも、居住用の賃貸料は上がらなかったはずです。
居住用の家賃、病院で払う保険診療分の支払いは、貸付の対価、あるいは、治療という役務の対価であるので、本来は消費税の対象取引なのです。
しかしながら、弱者保護の観点から、この取引を消費税をかけないと法律で定めているので、消費税の負担がないようになっています。
そういった弱者保護の政策的観点から消費税がかからないと法律が決めている取引に、
①社会保険医療の給付、②介護保険サービスの給付、③助産、④火葬料や埋葬料、④学校教育法に規定する学校への授業料等、⑤居住用の住宅の貸付 等があります。
(2)消費に負担を求める税金の理念になじまない取引
消費税は、消費することに対して負担を求めるというのが根本的な考え方にあります。よって、それになじまない取引には消費税をかけないこととしているものがあります。これも、限定列挙、つまり法律に書かれているものだけ限定となります。
典型的でかつ身近な取引は、「土地の譲渡・貸付」です。土地は消費されないから消費税をかけないことにしているのです。
この土地の譲渡・貸付は、(1)の居住用の家賃と違い、事業用であろうと、居住用であろうと、土地の売買・貸し借りに消費税はかかりません。
マンションを購入された方は、建物部分にだけ消費税がかりり、底地である土地部分には消費税はかからないという経験をされたはずです。(アスファルト等で整備した駐車場については、土地の貸付ではなく、駐車場設備の貸付になるので、消費税はかかります。念のため)
他にも預貯金や貸付金の利息は、預金や貸付をしたことの対価ではありますが、預金や貸付金等の金銭の動きは、消費という概念にはなじまない取引ゆえ、非課税となっています。
非課税取引と決められているすべての取引は、国税庁のサイトでご確認ください。このサイトに書かれている取引限定で消費税は(本来かかる取引だけど)かけないと法律で決めています。
4.まとめ
以上、消費税の対象となる取引、ならない取引、本来対象となる取引なのに非課税となっている取引があることを見てきました。この他にも、「輸出免税取引」というのがあり、「海外への売上」や「国際線の飛行機チケット代」等国外が絡む取引については、消費税を免税にするという規定があります。ただ少し複雑なので、またの機会に述べてみたいと思います。
消費税は、平成31年10月の10%への増税とともに、食料品などに軽減税率が導入され、ますます複雑になります。まずは本日の基本を抑えていただければ経理処理に役立つと思います。
今西 学
最新記事 by 今西 学 (全て見る)
- 数万円で買えるBrotherのモノクロレーザー複合機を使用中。スモールビジネスに高価な複合機は不要では? - 2018年5月11日
- 携帯靴べらに鍵をセットすることで靴べらを使うことを習慣化できました。 - 2018年4月17日
- 『健康診断という「病」』という書籍で会社の定期健診の意味を改めて知る。 - 2018年4月12日