みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している税理士・社労士の今西です。
今回は、給与から天引きする社会保険料と雇用保険料について、料率変更があった場合、いつの支払い分から天引き額を新しい料率に変更するのか検討してみたいと思います。月末締め翌月10日払いで給与支払いの顧問先があり、いろいろと相談を受けたことがきっかけです。
(1)料率変更について
協会けんぽの健康保険料・介護保険料については、平成29年3月分から料率変更になっています。健康保険料の率については、各都道県の協会けんぽごとに料率が違うのですが、大阪の場合は、本人負担分が5.035%⇒5.065%に変更となりました。また協会けんぽの介護保険料率についても、これは全国一律ですですが、0.79%⇒0.825%に変更になっています。
そして雇用保険料率の労働者負担については、平成29年4月より一般の事業については、4/1000⇒3/1000に、農林水産・清酒製造の事業 及び 建設の事業は、5/1000⇒4/1000に変更になっています。(厚生労働省のサイトはこちら)
(2)健康保険料の料率変更時期について
健康保険料率については、下記の条文で明らかになっていますが、給与を支払う場合、その前月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することになっています。よって、4月に支払う給与から、3月分の保険料を控除することになりますので、4月に支払う給与から3月分の今回値上げした料率で健康保険料・介護保険料を控除することになります。
なお、「給与を支払う場合」とありますので、中小企業によく見られる3月の給与を翌月である4月になってから(例えば4月10日に)支払う場合も、給与を支払うときに前月分の保険料を徴収するので、4月に支払う3月分の給料から料率変更になります。つまり、支払い日だけをみて、その計算期間が前月分であろうが、当月分であろうが、実際に4月支払う給与から保険料率を変更することになります。
健康保険法
(保険料の源泉控除)
第百六十七条 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。
私が税理士事務所に担当者として勤務し、顧問先をみていたとき、中小企業においては、3月分の社会保険料を本来の4月支払いの給与からではなく、3月支払いの給与から控除しているケースが度々ありました。当時は、どちらでも大差ないかなと思っていたのですが、社会保険労務士の勉強をしていたとき、予備校の講師の先生が「法律上は給与から控除(天引き)出来るのは、前月分の社会保険料に限定されているから、当月分の社会保険料を徴収することは違法であり、してはいけません」と強く指導されていました。それ以後気をつけています。
(3)雇用保険料の料率変更時期について
雇用保険料率については、いろいろと調べてみたのですが、法律の条文で明確に記載されている箇所はないようです。ただし、前回の労働保険料申告書、具体的には平成28年7月10日が申告期限であった平成28年度労働保険料の申告書の手引きに、当該申告で対象とすべき賃金の範囲として、「保険料算定期間中(平成27年4月1日~平成28年3月31日)の支払いが確定した賃金は、算定期間中に支払われなくとも算入されます。」と記載しています。よって、前回の申告での算定期間である平成27年4月1日~平成28年3月末の保険料算定に使う給料は、たとえ支給日が平成28年4月になっても、締め日が平成28年3月末でにあれば支給が確定しているので、平成27年4月1日~平成28年3月末の保険料算定の給与となります。当然、その申告で使われる料率は、平成27年4月1日~平成28年3月末の料率です。
ここから今回のケースを考えてみると、締め日が平成29年3月末で、給料支給が平成29年4月に入ってからであるときには、平成28年4月~平成29年3月の料率を使うので、引下げ前の旧料率で計算し、支給が平成29年5月にされる給与から新しい料率を適用することになるということになります。もちろん、平成29年4月分を4月に支払う会社は平成29年4月支給分から料率変更し、新しい料率で計算すれば問題ありませんが・・・。上記(2)の社会保険では、支払い日が一つの基準となっていましたが、雇用保険では支払いが確定した日、つまり計算期間の締め日を基準にして考えていく必要ががありそうです。
なお、4月に支払われる賞与については、就業規則等に、賞与の支給対象期間の末日が29年2月末日や3月末日までだが、支払いは4月と明記されているような場合には、3月末日までに支給を確定させていると考えられるので、旧料率で賞与の雇用保険料率を計算し、決算賞与等で、4月に支払いが急に決まり、かつ4月に支払ったようなときは新しい料率で計算するということになるようです。
以上、両者は考え方が違う部分があるので、混同しないようにしましょう。
今西 学
最新記事 by 今西 学 (全て見る)
- 数万円で買えるBrotherのモノクロレーザー複合機を使用中。スモールビジネスに高価な複合機は不要では? - 2018年5月11日
- 携帯靴べらに鍵をセットすることで靴べらを使うことを習慣化できました。 - 2018年4月17日
- 『健康診断という「病」』という書籍で会社の定期健診の意味を改めて知る。 - 2018年4月12日