みなさん。こんにちは。
本日は、ピョートル・フェリークス・グジバチ氏著作の「世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか」という本を読みました。
この書籍の表題は「なぜメールを使わないのか」という問いですが、すべてこの問いかけについて書かれている書籍ではありません。著者がグーグル社勤務で培った生産性をあげて仕事の成果をあげるための仕事術が57個綴られている本で、表題はその一つとして上がっている仕事術であります。
個人の仕事術だけではなく、前半部分ではチームによる仕事術が記載されていますので、新しい発想をして組織を変革し成果をあげていきたい経営者、自営業者の方にはぜひ読んでいただきたいと思います。また仕事の改善意欲をお持ちの会社員の方も、個人の仕事術について書かれている部分については非常に参考になると思います。
本日は一点だけ、仕事におけるイノベーションを起こすための発想方法について気になった点を述べてみたいと思います。
「クリエイティブな発想が求められるときに必要なのは、ひらめき、直感、研ぎ澄まされたセンスである」
著者は、イノベーションを起こすための企業研修を担当されることがあるそうですが、その際、「クリエイティブな発送が求められるときに、精緻な数値分析はいらないどころか、かえって邪魔になります。必要なのはひらめき、直感、研ぎ澄まされたセンスです。」とし、「コンサルティング業界でよく使われるSWOT分析(自社と競合の強みと弱み、事業機会、脅威)や思考のためのフレームワークは、すでに出たアイデアについて誰かに説明するときに有効なツールであって、アイデアそのものを出すためにそうしたツールを使っても、まずうまくいきません。コンサルタントはアカウンタビリティ(説明責任)を果たすために、様々なツールを開発してきたのであって、起業家(アントプレナー)やビジネスパーソンが最初のアイデアを着想するのは、それとはまったく別の種類の出来事です。」
(注)著者は、分析とは情報を集めて意味のあるまとまりにする分けるのが分析で、ひらめきは、神経細胞があちこちでつながってネットワークを作るように一見バラバラに見える情報にそれまで気づいていなかったつながりをつくることと述べておられます。
ここで、私が驚いたのは、イノベーションを行うためのツールとしてのSWOT分析を役立たないものとして切り捨てていることです。
私自身は、税理士・社会保険労務士資格とともに中小企業診断士企業資格も保有しているのですが、その資格をえるためには筆記試験合格後、実務補習(数人のグループで企業の診断を行い、改善点を提案するレポートを作成する実習)を受講する必要がありました。その際、全部で3社ほどの企業診断を行うのですが、どの回のときも企業の全体を捉える際にはSWOT分析が基本となっていました。
SWOT分析とは、企業の強み、弱み、と事業機会、脅威をピックアップして、企業を分析し、今後の課題等を導いていく分析方法です。診断士等のコンサルタントが使うフレームワークのうちSWOT分析は、アドバイスするためのフレームワークのうち基本のツールで、多くの中小企業診断士がよく使う企業の分析手法だと思います。しかし、著者は企業をイノベーションしていくには、そういったコンサルの分析ツールでなく、「ひらめき、直感、研ぎ澄まされたセンス」が大事と言い切っています。
確かに、私も自分自身の事業や税務会計の顧問先に対して、SWOT分析をし、事業の方向性を示そうと試みた事があるのですが、分析はなんとか無理矢理つくれても、そこから企業の進むべき新しい方向性を見いだせることは正直難しかったです。無理矢理と記載したのは実際にやってみると、自分や顧問先の事業の強み・弱みをとらえるのはなかなか難しいです。なぜなら、ひねくれたモノの見方かもしれませんが、強みは弱みとみることも出来るし、弱みは強みととらえることも出来るからです。
もし診断士等のコンサルタントがコンサルをする際も、まずはコンサルタントが商品として導く方向性が決まっていて、それを正当化するためにSWOT分析が使われるとしたら、残念なことですよね。(もちろん、優秀な中小企業診断士等のコンサルタントは企業のコンサルをする際、SWOT分析などもうまく活用されながらその企業に応じたイノベーションを見いだしていかれる方もおられるとは思いますが・・・)
起業を考えておられる方、新しく事業をイノベーションしていきたいと考える方は、銀行からの融資を引っ張るための事業説明の道具としてSWOT分析を使われるのはいいかもしれません。しかし、SWOT分析等の論理的分析だけでは、本当の意味で新しい発想は出てきにくいのかもしれません。私もついつい仕事するに際しては、論理ばかりで考えがちですが、ひらめき、直感、研ぎ澄まされたセンスももっと意識して取り込んでいかねばと考えさせられました。
以上ワンポイントだけとりあげましたが、この書籍は、従来の考え方の延長線上の工夫ではなく、抜本的に仕事のやり方を改善したいとき、見直す時に使える仕事術が書かれています。グーグル社で行われている仕事術に興味がある方はぜひ手に取って読んでみて下さい。
今西 学
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