無料の税務相談会場での税務相談には限界があります。相談者もご認識いただきたく。

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。

先週後半、事務所所在地である大東市の市役所内で毎月一回行われる無料税務相談会に、税理士会の派遣という形で出務してきました。時間は、13時~16時までの3時間で、30分×6人の相談枠があります。

当日は、3人の相談を受けてきました。無料相談とはいえ、簡単な質問ではなかったことから、相談時間も結局すべての方が1時間近くになってしまい、休み暇も無く結構疲れた一日でした。

この無料相談、時間も、資料も限られた中で相談をうけることから、相談を受ける税理士である私にとって悩ましい面もあります。

1.無料相談は何のため?

なぜ、世の中では、公的機関などで税理士が無料相談などが行われているのでしょうか?

税理士は、国から税務に関する独占業務を与えられた存在です。よって、税理士は公共性のある存在で、税理士業務においても社会的に貢献出来ることを行おうという趣旨のようです。

その一つには、小学校・中学校などに税理士が派遣され、税務のことを授業の形式で教える租税教育があります。

また、個人所得税の確定申告の時期に、経済的な理由から税理士に依頼出来ない小規模な事業者向けに無料相談会場にて、確定申告の書き方の相談にのるなどの活動をしています。(このことについては、税理士の中でも賛否いろいろな意見があるようですが、ここでは触れません)

そのような税理士会の活動の一貫として、通年で、毎月一回、私の地元の大東市役所でも無料相談を行っています。担当する税理士は、毎月ごとに税理士会の割当で決まり、今回は私が担当として派遣されることになりました。

ちなみに、無料相談ゆえ、相談者は無料で相談にのってもらうことが出来ます。一方、我々派遣された税理士には税理士会から若干ですが、報酬が出ます。

その報酬は、時間給的なものなので、相談者が仮に誰もいなくても、数人の相談を受けても、支払われる報酬は同じです。

2.どんな相談がくるのか?

今回は、昨年、一昨年と引き続き、3回目の大東市役所への無料相談会への派遣でした。特に昨年は、誰の相談もなく、3時間ずっと自分の仕事をしていました。

一昨年も、「相続税がかからないことの確認」的な簡単な相談だけだったように記憶しており、今年もそのような簡単な相談だと出務前は安易に考えておりました。

しかし、今年は相談をお受けした3人とも、結構、難しかったり、ボリュームがあったりしました。

よって予定時間の30分を超えても、まだ相談内容の結論がです、結局相談時間を超えてしまい、お一人の相談時間がすべて1時間近くになってしまいました。

本当は、30分で打ち切ってもいいのでしょうが、次の予約まで時間がある場合には延長してしまいがちになります。

なぜなら、相談の結論を出すことを相談者から強く期待されること、また私自身の税法の専門家としての習性上、「時間切れでもうわかりません。」と投げ出すも何か気持ち悪い気がすることからです。(原則的には時間が来ればそこで終わりでいいのですが。)

相談内容は、無料相談会の開催される時期や開催場所によって異なるものです。市役所のこの時期の相談内容は、事業をされていない、一般の個人の方からの相続税や贈与税、不動産の譲渡所得などに関する税金の相談が多い気がします。

今回、相談をお受けした3人のうち、2人は相続があり、税務署から相続税に関するお尋ねという書類がきたので、相続税の申告が必要なのかみてほしい、という相談でした。

また残り1人の方は、少し前に相続し空き家となっている物件を売却したときの譲渡所得の相談でした。

3.相続税・贈与税・譲渡所得の相談で計算までせざるをえない場合は時間的に大変。

無料相談はあくまで無料相談です。あくまで相談者の質問に対して、税務の取扱の大きなお話をさせていただくのが本来の無料相談の場だと思うのです。

例えば相続税とはどのようなものか、贈与税はどういう仕組みか、贈与税の申告には暦年課税と相続時精算課税がある等、それくらいなら30分でお話出来ると思います。

しかし、今回の相談の二つは、相続税がかかるかかからないか教えてほしいという質問でした。ある程度の相続税の説明をしつつ、相談者の相続財産の概略・相続人の状況などの概略をヒアリングせねばなりません。

また、相続財産に土地が含まれているときは、その場所を確認したうえで、路線価図から路線価を調べ、計算する作業を行う必要があります。そのうえで、相続税の概算の計算を行わねばなりません。

正直、相談者の状況を確認すると、あきらかに相続税がかからない人はすぐわかります。そんな時はその旨お伝えし、安心して帰っていただくことが出来ます。(このパターンが本来の無料相談の範囲かな?と思うのですが)

しかし、相続税かかりそうな人には、相続税の申告が必要の可能性が高いか、そうでないかをある程度慎重に計算する必要があります。

また今回の相続税以外の相談者であったもう1人の方も、慎重に考えないといけない相談でした。

相続した数十年前の土地付建物を売却したときに、申告する必要があるのか、する必要がある場合、どの程度税金がかかかるのか、取得時の土地と建物の価格の按分の仕方、また売却価額の土地と建物の按分の仕方などを知りたいというご相談でした。

そのような場合、空き家を売った場合の譲渡所得の3000万円特別控除など何か税額を減額出来る特例に該当しないかもチェックしないといけません。(そこは納税者有利な規定なので、そこまで無料相談でアドバイスする必要はないとの考え方もあるでしょうが。)

間違わないようにヒアリングしたうえで、慎重に計算したので、相談を受けた三人の方すべてで、結構時間がかかり大変でした。

4.自分の事務所で業務として受ける有料相談と違い、派遣される会場での複雑な無料相談は悩ましい

私が事務所の業務として単発で税務相談を受ける場合は、1時間当たり一万円でお受けしています。きちんと相続税の試算をし、税務署から送られてきた「相続税のお尋ね」の内容まで記載するときは、また別途報酬をいただくことになります。

この報酬をいただくということは、私の日々の生計を支えるうえで必要不可欠とうことは言うまでもありません。

しかし、別の面から報酬をいただくということをみれば、報酬をいただくことでそこには専門家としての責任が発生すると思っています。

間違ったことを言ったり、計算間違いをして、相談者にご迷惑をかけた場合、専門家の責任として、お客様への損害賠償等の責任が発生すると考えています。

しかし、公的機関などで行われる無料相談はどうでしょうか?。いい加減に回答するわけではないので、出来るだけ誠実に回答しようとは思いますし、間違わないように計算するよう努めることはもちろんです。

ただ、短い限られた時間の中ですから、事実を証明する書類の確認も不完全ですし、またゆっくりといろいろなことを聞ける時間も限られています。

加えて、税額計算も検算する時間がないことも多いですし、調べればもっと納税者に有利な規定が適用出来るのに、時間的にそこまで調べきれないこともあるでしょう。

よって、無料相談では、100%正しい答えを出すことはお約束できないですし、また聞き取りが不十分等で仮に間違ったこと、不十分なことを言って相談者にご迷惑をおかけしたとしても、税理士側の責任はないと思っています。(冷たいようですが)

もちろん専門家としての誇りもありますし、限られた時間の中で全力を尽くしますし、また専門家として、税法の基本的なことを間違うのは論外だと思いますが。

私も確定申告会場も含めて数多く無料相談を受けてきた中で、後から考えたらこういう規定も使えたなと終了後に気付いたことも正直ありました。ただ、あくまで匿名の相談者として相談をうけているので、連絡のとりようもありません。

もちろん、きちんと伝えられなかった事に対して後味の悪さは残りますが、最終的には仕方ないと割り切らざるを得ません。

もちろん私自身の能力の未熟さによることもありますが、でも私以外の多くの税理士についても、パソコンはあっても専門書等は手元になく、また時間のない中での相談では、いつも100点の回答をするのは難しいでしょう。

よって無料相談に来られる方もその認識で来ていただきたく思います。間違いないアドバイスを求めるなら、税理士に報酬を払って、しっかりと相談していただければと思います。

(編集後記)

無料相談は、「無料」だから来る方も多く、その後、お金を払って税理士に仕事を依頼されるケースは多くない気がします。もちろんこちらからも、派遣されている立場ということもあり、積極的には営業しません。

ただ今回は、無料相談をきっかけで、相談者のお一人から相続税の申告のご依頼をいただきました。数多くの無料相談に出務してきましたが、今回初めてです。

ありがたい御縁なので、お客様のためになる申告書作成が出来るようしっかりと取り組んでいきたいと思います。頑張って相談を受けた甲斐があったかな?

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら