平成29年厚生年金保険料率の変更とその変更時期について

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。平成29年9月分から厚生年金保険料率の変更になります。こちらの時事通信社のニュースにも出ていますが、今回の厚生年金の保険料率の引き上げは完了することとなり、来年平成30年以降の保険料率は、上がらないことになっています。

1.平成29年9月に厚生年金保険料率の最終引き上げが行われ、以降は固定されます

平成16年の年金制度改正により、厚生年金保険料率は、”保険料水準固定方式”になりました。”保険料水準固定方式”とは、日本年金機構のホームページより引用すると、

終的な保険料(率)の水準を法律で定め、その負担の範囲内で給付を行うことを基本に、少子化等の社会経済情勢の変動に応じて給付水準が自動的に調整される仕組みを年金制度に組み込む

考え方です。平成16年の改正では、平成29年9月を最終固定の年金保険料率とし、平成17年9月以降は、毎年9月に3.54/1000(事業主、個人それぞれ1.77/1000)を引き上げていくことが決まりました。そして、今年、183.00/1000(18.3%)の年金保険料率に引き上げることで、法改正で設定した最終保険料率に到達しました。

ここからは、厚生年金保険料率は、あがらないこととなります。よって、この保険料で厚生年金の支給財源が足りなくなるようであれば、年金を受け取っている方の給付水準を調整されることになります。(年金支給額を抑えるということです。)

<参考:以下が法的根拠である厚生年金保険法 第81条4項す。>

「保険料率は、次の表の上欄に掲げる月分の保険料について、それぞれ同表の下欄に定める率とする。」として、次の表として、各期間の年金保険料料率が記載され、平成29年9月以降は、183.00/1000で固定されているのがわかると思います。

2.会社員の方は気付きにくい天引きされる厚生年金保険料率の変更

この厚生年金保険”料率”の変更ですが、天引きされる会社員の方は、気付きにくいです。その理由は以下の二点です。

(1)厚生年金保険料の引き上げ額がわずかであること

会社員の方は、料率アップによる天引きされる年金保険料の増加額は、標準報酬月額が変わらない場合には、それほど大きなものではありません。例えば、標準報酬月額が30万円の場合は、今回の料率アップで天引きされる社会保険料が27,273円から27,450円に177円増加します。わずかな増加なので、給料の手取額が177円減少したことになかなか気付きにくいかもしれません。

(2)定時決定により、1年間の標準報酬額が決定されるのも同じ9月分からであること

(1)より保険料率の変更に気付かない原因はこちらの方かもしません。

よく世間では、社会保険料を抑えるため、「4~6月はなるべく残業しないように」ということが言われています。聞いたことのある方も多いでしょう。

それは、会社員の方が天引きされる年金保険料の額は、

「標準報酬月額 × 厚生年金保険料率の折半分」

で計算されます。この標準報酬月額が、通勤費・残業代等も含めた4~6月の3ヶ月の給料の額の平均で、決定され、原則として9月~翌年8月までの1年間が計算されることになります。(こちらの表のいずれかの標準報酬月額に決定されます。)

よって、4月に昇給した人、あるいは今年の4月~6月が全体的に前年より忙しく残業代が前年より多かった人、などは、標準報酬月額が上の等級にアップすることとなる可能性が高いです。それが9月分の社会保険料からなのです。

よって9月分の天引き社会保険料の変動については、標準報酬月額の変動の方が、年金保険料率1.77/1000の変動以上に大きく影響するのが一般的です。なぜなら、上記算式に与える影響が大きいし、また標準報酬月額の変動は、年金保険料だけでなく、健康保険料にも影響するからです。(もちろん下がる場合も、標準報酬月額の変動は、保険料率の変動より大きく、天引き保険料額を引き下げることになります。)

この同時期に行われる標準報酬月額の変動の陰に隠れて、年金保険料率のアップは天引きされる側では、気付きにくいかもしれません。

3.変更された厚生年金保険料率で計算するのは、いつ支払の給与から?

では、9月分の社会保険料は、いつから天引きするのが正解でしょうか?9月支払分の給料から?あるいは10月支払分の給料から?

答えは10月支払分の給料からとなります。その根拠は、厚生年金保険法 第84条から導かれます。

(保険料の源泉控除)
第84条 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所又は船舶に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。

条文を簡単にすると、「事業主は、(中略)前月の(中略)保険料を報酬(中略)から控除することが出来る。」となります。よって、9月分の年金保険料を徴収するのは、10月支払分の給料から控除することになります。

なお、10月支払分の給与とは、計算期間が9月1日~30日まであろうと、9月26日~10月25日であろうと、あくまで会社で決まっている支給日が10月にある給料のことです。よって、10月に支給日が来る給料から、控除する年金保険料率を新しい率に変更すればよいことになります。お気をつけ下さい。

なお中小企業ではたまに見かけますが、同月分の社会保険料を徴収しているケース、例えば9月支払分の給料から9月分の社会保険料を徴収しているケースがあります。これは、上記条文にあてはめると、厳密には、間違いです。(ペナルティまではないと思いますが)

上記のようなケースで、もし、正しく徴収するようにしたいなら、一回社会保険料の徴収をお休みすればいいのです。9月支払分の給料から9月分の社会保険料を徴収せず、10月支払い分の給料から9月分の社会保険料を徴収する。後は、同様なタイミングで前月分の社会保険料を徴収していけばよいことになります。

4.まとめ

以上、厚生年金保険料率変更に伴うお話でした。

なお、社会保険料のもう一つの柱である健康保険料・介護保険料率については、今後も医療費の増大により、アップしていく可能性があります。

加えて、先の時事通信社のニュースにも出ていましたが、幼児教育の無償化などを目的とした「こども保険」の設立が今後検討されているようです。そして、その財源としての保険料が、社会保険料に上乗せされる可能性が報道されています。

厚生年金保険料率が今後上がらなくても、社会保険料率全体は今後も上がっていく可能性は高いです。ご注意ください。

(編集後記)

同じ理屈で、4月入社の新入社員があった場合、4月支払い分の給料から、社会保険料を徴収してはいけないことになります。なぜなら法律上徴収出来るのは前月3月分の保険料だけですが、その新入社員はまだ3月は入社前で社会保険に未加入だからです。よって、初月は社会保険料を徴収しなくていいケースも多いはずです。

そのあたりのことについて、細かく書かれている社労士の方のサイト見つけました。少し細かいですが、ある程度わかっている人がみれば、参考になると思いますよ。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら