リース取引のメリットとデメリット。リースを使う場合・使わない場合。

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。先日、大阪府中小企業診断士協会で、私が中小企業診断士として所属している研究会にて、「リース業界の特徴と実態」についての研修を受けてきました。簡単にポイントを、お伝えしたいと思います。

1.税務上のリース取引とは?レンタルとは違うのか?

税務上のリース取引とは、以下の両方の要件を満たす場合になります。

(1)中途解約禁止

契約上、リース期間の途中で解約できないもの、または中途解約する場合、未経過リース料のおおむね全額(原則として90%以上)を借手が実質的に支払うもの。

(2)フルペイアウト

借り手がそのリース資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているのもの。

なお実質的に負担するとは、リース料総額がリース会社のリース資産取得価格と付随費用(利息、固定資産税、保険料など)のおおむね全部(原則として90%以上)であることを言います。

また、「経済的利益を実質的に享受すること」とは、そのリース資産を自己所有するとすれば得られると期待されるすべての経済的利益を享受することを言います。

なお、リースとレンタルを混同されている方がおられますが、レンタルは、上記二つの要件を通常満たしていません。

例えば、建設現場でフォークリフトを工事期間である三ヶ月だけ借りるのは、レンタルとなります。レンタルは、あくまで一時的に借りるだけです。レンタル会社のフォークリフトの取得代金をすべて借り手が負担するものではありません。ただ、三ヶ月という一時的な賃借料を払えばいいだけなのです。

また借り手は契約後の三ヶ月だけしか使えません。よって、借り手がフォークリフトの取得のための費用をほぼ負担し、その負担期間中、解約出来ない代わりに、自己所有と同様にずっと使い続けることが出来るというリース契約とは異なることになります。

2.リース取引のメリット

では 固定資産を手元で活用したい場合に、銀行から借り入れしてその資金で購入するのではなく、リースを利用することとした場合のメリットとはどのようなものでしょうか?いくつかあげてみます。

(1)多額の資金を用意せずに、最新鋭設備を導入することが出来る。
 リース期間中に定額のリース料を支払っていけばよいので、自己資金や借入により多額の資金を用意して、設備を購入する必要がありません。

(2)事務の省略化が出来る。
 リース資産の所有権は、リース会社にあります。よって、償却資産税(固定資産税)の申告・納付はリース会社が行います。またその年度にいくら経費に出来るかという減価償却費の計算、損害保険契約の契約手続きなどの管理事務を省略化ですることが出来ます。

(3)設備の使用期間に合わせて償却期間を設定しやすい(陳腐化に対応出来る。)
 税務上決められた法定耐用年数ではなく、会社が設備を使用する期間にあわせて、あるいは近づけて、リース期間に設定することが出来ます。

リース期間については、税務上の所有権移転外リース取引に該当する範囲内で考えると、税法上の法定耐用年数の70%(法定耐用年数が10年以上の場合は60%)まで短くすることが出来ます。

例えば、食料品製造業用設備の機械装置は購入すると、法定耐用年数が10年になりますが、リースにすると、リース期間をその60%である6年とすることが出来ます。

よって購入なら10年で費用化・経費化するものを、リースなら最短6年で物件購入相当額を費用化・経費化することが出来ます。よって、モデルチェンジの速いリース資産の場合は、陳腐化する前に費用化・経過してしまい、リース期間が満了すると、すぐ次の新製品を導入することが出来ます。

(4)コスト把握が容易である。
 リース料は、リース期間中、ほぼ定額ゆえ、毎事業年度に必要となる資金や経費となる額を把握しやすいと言えます。

(5)手続きが簡単である。
 原則、リース契約を締結する場合には、銀行から借入をする場合と違い、担保を求められませんし、保証人さえ不要なケースがあるとのことです。また、リースの審査は簡素化されており、一般的には銀行借入よりも比較的審査が容易であると言えます。

3.リース取引のデメリット

今度は逆にリース取引のデメリットです。

(1)中途解約が出来ない
リース期間中の解約は原則として出来ません。もし解約するときは、リースの残代金とは別に契約で決められた損害金(物件当初価格の15%相当等)が、徴収されます。特に損害金は、リースの残期間がわすかでも契約期間内に解約すると違約金が徴収されます。(その場合は、リース契約は解除せず、最後まで空リース料を支払い続け、契約を続けた方が、損害金がない分、支出が少なくてすみます。)

(2)リース料は当初より固定される
 リース期間開始後に、国内の金利が仮に下がっても、リース料は固定されてるため、金利低下による支払利息負担額の減少というメリットをうけることができません。(逆に金利が上昇した場合には、支払利息が増えるという悪影響を受けないので、この場合にはメリットにもなりえます。)

3)借り入れするのと比較して割高である。
 リース料の総額は、資金調達コスト、固定資産税、動産総合保険料、及びリース会社への手数料、リース会社の利益などが含まれて計算されます。よって、自然と銀行で借入するのより、支払総額は大きくなってしまいます。

(4)リース会社から物件の保守・修繕が受けられない
 メンテナンス費用が含まれているリース契約は現状では少ないので、借り手はリース会社から物件の保守・修繕を受けることが出来ません。よって借り手が、借り手自身で、製造メーカー等に保守・修繕の依頼をし、またコストも負担する必要があります。

4.リースと借入どちらで設備を調達した方がいいのか?

中小企業の経営者から、自己資金がない中で設備を調達する場合、リースと借入どちらを選んだ方がいいですか?と聞かれることがあります。この答え、一律には答えるのが難しい質問です。

私なら、中小企業で、借入金等が既にある会社、財務があまりよくない会社には、何かあったときに銀行が融資してくれる枠を残すためにも、また銀行の融資姿勢の変化により資金引き上げ等にあわないためにも、リースで調達することをお勧めします。

ただ、財務のいい会社なら、費用総額の少なくなる銀行借入により設備を導入することも選択肢になりえるかとは思います。

もう一つ、税法上の耐用年数等を超えて、長期で使う予定の固定資産を導入する場合には、借入による調達の方が合理的かも知れません。なぜなら、リースなら、リース期間が終わっても使い続ける場合、リース期間中の年間リース料の1/10程度の再リース料を毎年払う必要があります。よってその分リースのコストはより大きくなるからです。

中小企業の経営者の方は、顧問税理士等と相談され、会社の状況、設備の内容及び使用予定期間により、借入がいいか、リースがいいか、適宜ご判断いただければと思います。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら