税理士事務所の料金設定は様々。低価格だけが正しい道ではない。

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。先日、ホームページを更新した旨の記事にも記載しましたが、ホームページの更新にあわせて顧問料の報酬を少し値上げしました。

無形のサービスを提供するという面もある税理士の顧問料は、いくらが適切なのか、開業当初は非常に悩みましたし、今も考え続けています。

1.税理士事務所の報酬は自由に決めることが出来る時代

税理士の報酬については、平成14年3月までは、税理士会が定める税理士業務報酬規定があり、税理士報酬の最高限度額が決められていたようです。この報酬規定は、あくまで最高限度額を決めたものですが、税理士が顧問先との報酬を決める際の一つのベースとなっていたようで、税理士報酬は、今と比べて高い金額で、比較的安定していた旨聞いております。(私がこの業界に入る前の話なので、聞いた話になりますが)

しかし平成14年3月にこの規定が廃止され、顧問料等の税理士報酬は完全に自由化されました。その前後で開業した税理士の方は、全体的に今より高いめであった税理士報酬を少し低く見直すことで、感謝されつつ、顧問先を増やしたという話を聞いたことがあります。

その後、ブロードバンドのインターネットの普及が進んだこともあり、税理士事務所でもITに強い事務所などは、低価格をウリにしたホームページを作成し、顧問先を集めるようになりました。10年ぐらい前からでしょうか。激しい低価格競争が始まった気がします。

低価格事務所の多くは、個人事務所ではない税理士法人という法人組織をつくり、低価格で勝負する体制を構築します。組織の規模を大きくし、比較的低賃金の従業員を多く雇うことで、薄利多売的に顧問料等を引き下げることが出来るからです。

2.開業当初は税理士報酬の設定に悩んだ

では、自由化された時代に税理士報酬は、どのように決めたらいいのか?開業当初非常に悩みまいた。どこの事務所も試行錯誤しながら料金設定をしていると思います。

ではなぜ料金設定は簡単ではないのか?その理由をいくつかあげてみます。

(1)仕入のある事業ではないということ

仕入のある事業なら、料金設定に大きく悩むことはないと思います。なぜなら、在庫処分などを除いて、仕入の価格以下の販売価格には出来ないはずです。よって、その仕入れ価格をベースにいくらと設定すればいいのでしょう。(もちろん、どの業界も価格競争が激しいことは承知しておりますが)

しかし、ひとり税理士事務所の場合、そういった直接的な仕入というのはありません。知識を得るための書籍代、研修費などは広い意味では仕入といえるのかもしれませんが、直接特定の顧問先と一対一対応するものではないことも多いです。よって考えようによれば、直接原価ゼロとも言えます。

なおもし、従業員を雇っておれば、ほぼ従業員に作業を任せるという方法をとることで、その従業員の給料から税理士報酬を算定することが可能と言えます。

具体的には、その従業員の時間給とその顧問先の業務に係る時間数を乗じれば、それが直接原価となり、それを元に顧問料を算定することも出来るのかもしれません。しかし私の場合はひとり税理士事務所ゆえ、それも出来ません。

(2)顧問先に直接的な利益を与えてその一部をもらうというビジネスではないこと

弁護士の業務には、裁判等で、相手と交渉し、賠償金を勝ち取ったり、逆に訴えられている人なら交渉により相手方から求められている賠償金額を減額したりして、依頼者に経済的な利益を与えることとも含まれます。よって、弁護士報酬は、契約している方に直接的な利益を与えることにより、成功報酬としてその何割かを報酬でもらうというビジネスモデルです。

社会保険労務士が助成金をサポートした時の報酬も同様でしょう。助成金が依頼者におりるサポートをして、成功すればその助成金の何割かを報酬としてもらうというビジネスモデルです。
いわば、ウインウインのかたちで、報酬をもらうことが出来ます。依頼した側も依頼された士業もどちらも嬉しいからです。

しかし、税理士報酬は原則的にそういうものではありません。(一部は成功報酬というものもありますが)例えば顧問報酬と決算料で、年間50万円の報酬をいただくこともあるでしょう。その場合、もちろん節税のアドバイスはしますが、50万円以上顧問先の納税額を減らせるということは、必ずあるとは言えません。正確に言えば絶対ないとは言えませんが、毎回毎回顧問料以上の節税をするのは事実上不可能であると思います。

それなのに、決算・申告をした報酬を節税額にかかわらず、請求させていただき、顧問先にはきちんと納税していただくというお願いをすることになります。

3.税理士報酬は事務所によって様々。お客様との関係性を示す一つの指標であると思います。

では税理士報酬とはどのように決めるべきか。もちろん税理士同士の競争もありますから、他の事務所との比較で決まるという面もないわけではありません。
当初、私も、安い従業員に担当を任せている格安の事務所を意識して料金を決めていました。それより低くとは思わないですが、でも大きく負けないように料金を設定しないと生き残れないのではいう意識はありました。

しかし、独立して3~4年して、それでは自分の身がもたないということに気づきました。低価格事務所の資格のない従業員と私とでは、同じサービスを提供するわけではないのだから、料金は格安事務所と競争しても仕方がないということに気づいたということです。

帳簿を作り、決算を組み、申告書を作成するだけなら、それほど大きなサービスの違いはないのかもしれません。(ただ、あまり言ってはなんですが、税理士が最終チェックだけする低価格の事務所では、提出した申告書について何らかの不備があることも、一定の確率で起こりうると思います。)

ただ私の場合、顧問先の幅広い悩みへ回答したり、経営者個人の所得税の節税・資産の蓄積、年金や社会保険料のことなどもふまえてアドバイスしたりするのがウリなのです。よって、低価格の事務所とは提供しているサービスが違うはずです。お客様との関係の親密度も違うはずです。そう考えると、低価格事務所と、比較して料金を設定する必要はないのだと現在は思っています。

ただ、それではどのように決めているのか?自分の担当出来る顧問先が15社ぐらいとすれば、それで安定した生活が出来る年収が稼げるようにということを頭に入れてベースをつくります。そのうえで、顧問先の売上(難易度と見なしています)や訪問回数によって、顧問料・決算料を決めています。

結果として、昔の報酬規定ほど高い料金ではないですし、私なりに適正な価格と思っています。ただそれでも完璧な価格設定かというと100%の自信があるわけではないですが。

4.まとめ

時代とともに、税理士を先生業と見る人は間違いなく減ってきているでしょう。帳簿と決算書・申告書を作成さえしてくれればいいと思っている経営者から見れば、税理士事務所は定型サービスの外注先と見えるでしょう。そうであるなら、出来るだけ価格は安い方がいいということになるのでしょう。

そういう経営者には、いくらこちらが精一杯サービスを提供しても、求めるものと提供する価値にずれがあるため、結局空回りしていることになるのでしょう。

実際にいったん合意のうえ顧問契約したのに、訪問する度に価格が「高い」「高い」と言われ、それに対して思わず言い返すとすぐ契約解消になったケースもありました。自分の提供しているサービスと、相手方の求めるものとのずれがあったからでしょう。

ただ、こちらも低価格事務所とはどう違うのか、出来る限りアピールしていく努力も必要だと思います。

より親身なアドバイス、サポートというのは無形のサービスという面があるので、なかなか具体的にその良さを顧問契約していただく前に言葉で伝えることは難しいと言えるでしょう。
それでも今私と契約して喜んでいただいている顧問先のお客様には、その良さが伝わっているのだと思います。そのあたりをうまく言葉で表現して発信しつつ、ニーズのマッチしたお客様からお声をかけてもらえるようにしないといけません。

そんな方々と出会い、精一杯仕事に取り組めば、税理士報酬もサービスと比較して安いと思ってもらえるのだと思います。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら