個人年金保険にはない公的年金のメリット

こんにちは。名前の今西から、now3(今さん)のドメインでブログを書いている税理士・社労士の今西です。前回のブログの続きです。さて、生命保険会社が販売している個人年金保険はそもそも公的年金の代わりになるものでしょうか?私はそうは思いません。両者の間に相違点があるからです。いくつかの相違点があるかと思いますが、今回は以下の3つの観点から考えてみたいと思います。

(1)公的年金は無期年金で受給を開始したら亡くなるまでもらえます。

 
民間の個人年金保険は納められた保険料を運用して、その運用見込額の範囲内で将来年金として保険契約者に対して年金を給付するものです。年金保険は、保険ではありますが、積み立てた保険料の額とその利息を老後に受け取る運用商品的な意味づけが強いのであります。
運用見込額部分がありますので、自分が納付した保険料を上回る年金を受け取ることが出来ますが、積み立てた保険料とその運用見込額(利息)がなくなれば、その時点で年金の支給は終了します。

一方の公的年金は、無期年金ですので、長生きしても亡くなるまで年金をもらえます。新書”「年金問題」は嘘ばかり”で著者の高橋洋一氏が書かれているとおり、”年金は長生きした人が得する保険”なのです。これは公的年金は保険的意味合いが強く、早く亡くなる方も遅くなるなる方もおられる中で、早く亡くなる方が掛けていた保険料は掛け捨てになってしまったり、ほとんど回収出来ずに亡くなってしまう一方、長生きする人はその分をもらい続けるという構造になっているのです。

よく平均寿命で亡くなることを前提として、納付した年金保険料が公的年金を上回るのか、下回るのかという損得の話が雑誌等でされています。しかし公的年金の制度の考え方からすと、平均寿命で亡くなれば、公的年金は保険料を下回る年金しか将来もらえないので、損をするという考え方でをするのは間違っていると思います。平均寿命以上に長生きしたとき(これをある種の「リスク」と考える事が出来ます)にも、最低限の生活をするための保険を掛けていると考えるべきだと思います。一人一人の人間は、平均寿命で亡くなるとは限りません。公的年金は死ぬまでもらえる年金であり、長生きすれば必ず支払った保険料を上回る年金を受け取ることが出来るということは知っておいてほしいと思います。

 

(2)公的年金は障害年金という年金も含まれています。

 
公的年金には、病気、交通事故等その他の何らかの事情で障害を負った場合に、その障害の程度に応じて年金をもらえるという障害年金という制度も含まれています。民間の個人年金保険にはこのような機能はもちろん含まれていません。障害になって働けなくなったときのリスクに備えるためには、民間の保険のみでまかなう場合、生活費を補填する所得補償保険等への加入が個人年期保険とは別に必要ですし、当然年金保険とは別途掛け捨ての保険料が必要となります。しかし公的年金に入ることで、障害になり所得が軽減した時のリスクの最低限はカバー出来ることになります。

 

(3)納付した公的年金保険料の全額が所得控除され節税効果があります。

 
公的年金は、掛けた保険料の「全額」を社会保険料控除として所得から控除出来ます。つまり公的年金保険料を納めることにより節税効果を得られます。よって、仮に掛けた保険料より多くの年金がもらえるかという単純な損得を考える際には、本来はこういった節税効果も踏まえるべきであると考えます。(正確にいうと、年金を受給する時に税金がかかることになりますが、公的年金等に係る所得に対しては公的年金等控除額が設けられており、所得がかかりにくいよう政策的に配慮されています。)一方の個人年金保険料は、いくら保険料を掛けても控除額は年間「4万円が上限」となり、節税効果によるメリットはあまり大きくありません。

 

以上、公的年金は民間年金保険と比べて悪いところばかりではありません。もちろん公的年金は法律により強制加入ですので、納めていない場合、最近のニュースにもなっていますが、強制徴収の対象になるものです。
しかしながら、自営業の方は国民年金の保険料を自分で納付するため、いろいろな噂に惑わされて、納めていない方もおられると思います。(会社員で正社員の方は厚生年金に加入され、保険料が給料から天引きされますので、原則未納はありません。)
少子高齢化の時代を迎え、これから公的年金をもらい始める世代の人が、現在もらっている世代の人と比べて、掛けた保険料に対してもらえる年金の額が少し減るというのは避けられないでしょう。ただ公的年金には民間の個人年金保険とは違うメリットもありますので、現在現役世代の自営業の方もしっかりと国民年金を払っていただきたいと思いますし、所得が低く保険料が払えないときは免除制度をきちんと利用して加入を続けていただきたいと思います。

(編集後記)
事務所で仕事するときに、ラジオのFM802を流してることが多いです。3月のFM802のヘビーローテーション(推薦曲としてよくかかる曲)は、尾崎豊の息子である 尾崎裕哉が歌う「サムデイ・スマイル」でした。尾崎豊のファンであったという贔屓目が多少あるかも知れませんが、歌詞もいいし、口ずさみやすいし、とってもいい曲だと思います。またぜひ機会があれば聞いてみてください。私もカラオケで歌ってみたい曲ですが、途中に台詞が入っているので少し恥ずかしいかも・・・。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら