8月8日より始まった税理士試験についての概要

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。

本日から平成29年度の税理士試験が始まりました。8日~10日の3日間です。私も、ちょうど15年前のこの時期に、第一回目の受験をし、以降6回、この時期に受験しました。少し前の出来事になりますが、試験についての苦い思い出、嬉しい思い出はいまだに印象に残っているので、つい最近の出来事のような気もします。

1.税理士試験の特徴

税理士試験は、1年に1度、8月第2週あたりに実施されます。試験時間は、1科目ごとに2時間。ただ、ほぼ全員の受験生は、全部の科目を一年で受験するわけではありません。

税理士試験の受験資格は、少し複雑なのですが、ものすごく簡略化して言えば、

・「学歴」での受験資格
大学・短大・高専を卒業しており、大学で法律あるいは経済の単位を1科目以上とったことがある人
(普通は一般教養等で勉強すると思いますので、大学を出ていればほぼ受験資格は自動的に満たされていると思います。)
あるいは大学在学中の3年生以上の方で、62単位以上を取得し、かつ法律あるいは経済の単位を1科目以上とったことがある人

・「資格」での受験資格
日照簿記1級、全経簿記上級に合格されている方(高卒の方は、このどちらかの資格をとったうえで、税理士試験を受験出来ることになります。)

・「職歴」での受験資格
会計や税務、法律に関する仕事を3年以上続けている人

以上のうち、いずれかの受験資格があれば受験出来ます。

試験科目は、「簿記論」「財務諸表論」(以上2つは合格が必須)「法人税法」「所得税法」(以上、二つはどちらかの合格は必須)「消費税法」(又は「酒税法」)「相続税法」「固定資産税」「国税徴収法」「住民税」(又は「事業税」)の11科目です。うち5科目に合格したら、税理士試験合格となります。

よって、何年かにわたって科目を選択し、受験し、合格科目を積み重ね、五科目揃った時点でようやく税理士試験合格となります。

他の弁護士試験、公認会計士試験、社会保険労務士試験などのように、一回の受験で、資格試験の合否が決まるものではなく、一科目合格しても、また次の年に一年かけて準備して、別の科目を受験することになります。

この方式のいいところは、働きながらでも一科目ずつ合格を積み重ねていける点であると言われています。弁護士試験や公認会計士試験などの難関試験では、1年で数科目の受験が必要となるゆえ、どうしても大学生や卒業後すぐの人で、受験にほぼ専念している人しか受かりにくくなります。

しかし税理士試験は、一年で一科目に絞って勉強していけば、働きながらでも何とか合格出来る可能性があり、その積み重ねをしていけば、理論上は数年で合格出来ることになります。

合格者は60点以上と公式にはなっていますが、実際には受験者の上位10~15%前後が合格する試験です。よって、問題が簡単で多くの人が6割以上出来たとしても、1つの科目受験者で、3割~4割も合格するということはありません。

(例えば、簿記検定などは純粋に70%以上の正解率が合格となっているので、問題が難しければ非常に合格者が少ないケースもありますし、簡単であれば、合格者がすごく多いケースもあります。一方、、税理士試験は、問題の難易度にかかわらず上位1割強が合格となっているようです。)

2.受験期間

一方、税理士試験のデメリットは、受験期間が非常に長くなってしまう場合が多いことです。一年で合格するのはほぼ不可能で、受験に専念している人で、かつ非常に出来る人だけが二年で合格されます。

通常は、ずっと受験勉強に専念している人で順調な場合、3年で合格出来る可能性はあるのでしょう。それでもすごく早い合格だと思います。

正確な統計はないのですが、10年ぐらいかけて合格する方も多いイメージがあります。私は、合格まで6年かかりました。この業界を知っている人に合格まで6年とお伝えすると、「まずまず順調でしたね」と言われることも多々あります。(またの機会に触れたいと思いますが、自分では実際には全然順調ではなかった気がするのですが・・)

長い人だと10年~20年受け続けている人もいると思います。最初の1~2年で、受験した科目が受からないと、この試験から撤退出来るのかもしれません。長引く人は、よくも悪くも、2~3科目比較的早くに合格して、残りの科目を何年も通らないような人が多い気がします。

登山でいうと7合目ぐらいまできてしまうと、そこから先の状況は難しくても下山出来なくなるイメージでしょうか。(私は登山はしませんが・・・)

今,受験を止めるとこれまで投入した莫大な勉強時間が無駄になることが確定してしまうわけです。よって、このまま受験し続けても合格の可能性は低くくとも、ずっと受験しつ続ける人が、特に会計事務所職員の方にはしばしば見受けられます。(税理士試験科目によって、比較的合格しやすい会計科目と合格がより激戦になる税法科目があります。)

3.受験者数の減少

そんな税理士試験ですが、最近受験者数が減少傾向です。私も受験していた2005年(平成17年)の受験者数(一科目でも受験した人)は、ピークで56,126人いたのですが、昨年2016年(平成28年)の受験者数は、35,589人とかなりの減少となっています。(ピークより約37%減になります。)

この業界も競争が厳しくなってきて、合格しても税理士として独立開業することは難しいといわれる状況になっていると言われています。それにより資格の魅力が薄れてきているという面もあると思います。税理士という資格だけで食べていける時代ではなく、独立開業したらそこからがまたスタートになるからです。

現在では合格した後に、大きな税理士法人に勤務の税理士として勤め続ける人も多いようです。ただそうなると、一般の会社に勤務して、経理の仕事につくのとそれほど大きな差がないように思われ、わざわざ3年~10年の受験生活を経てまで資格をとろうとする魅力が薄れているのだと思います。

さらに、今後についても、AI化が進むと淘汰される職業の一つに「税理士」が挙げられることもあり、将来性に関しても魅力を感じないと思っている人も多いのでしょう。

確かに競争が激しくなっているのは、私自身も体感しています。よってあまり多くの税理士試験合格者がでると、ますます競争が激しくなるので、受験者数が減って、税理士数があまり増えないのは私にとってはいいことかもしれません。

ただ、矛盾しているようですが、業界自体が縮小していくことについては、寂しさも感じています。(厳密に言うと税理士になるルートは試験だけではないので、受験者数の減少イコール将来の税理士の減少ではないですが、相関性は非常に高いと思います。)

またの機会に私が税理士を目指したきっかけや、受験生時代のことも書いてみたいと思いますが、今日はこのへんで。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら