みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。
ご存知の方も多いと思いますが、年間110万円までの贈与は、贈与税がかかりません。よって、将来、相続があったときに相続税がかかる方は、少しずつ贈与して相続する財産を減らしていくことは有効な相続税対策になります。
さて、贈与は、紙の契約書がないと成立しないのでしょうか?それとも紙の契約書がなくても成立するのでしょうか?
1.民法上はお互いの合意のみで贈与は成立する。
民法上は、贈与はお互いの意思の合致があれば口頭でも成立します。よって例えば、平成29年6月7日に親が現金を子に贈与し、子がその現金をもらうという意思があれば、それだけで贈与は成立します。文章による契約書がないからといって、その贈与は無効とはなりません。
また、契約書を作成しなくとも、第三者間でなく、親族間では、細かいところでもめることもないでしょうから、無理に紙の契約書を作成する必要はないように感じられるかもしれません。
2.税理士としては贈与時に契約書を作成することをお勧めします。
しかし、後日、税務署の贈与税の調査、相続税の調査などで、現金の受け渡しは証拠に残らないので、平成29年6月7日に本当にそういった贈与という事実があったのか、疑いをもたれるケースもあります。その場合でも贈与日に、親の預金通帳から贈与額の引出があり、同じ日に同額子の預金通帳へ預け入れがあったなら、親から子へ資金移動があったことについては、限りなく事実であると推定されうるかもしれません。
しかし、その資金移動がお金を子どもにあげた「贈与」なのか、お金を子どもに貸しただけの「貸付」なのかなど、後日第三者の観点からみたときに、どちらが事実であったのか疑いがもたれるケースがあります。
このような疑いをもたれないように、特に相続税対策で何かを贈与するときなどは、契約書をなるべく作成するようにお伝えしています。
もちろん贈与でもに親の口座から子の口座へ振込で資金移動し、その事実が通帳に明確に記録として残る場合などは契約書がなくても事実が立証しやすいです。ただ、問題なのは記録に残らないものの贈与です。
記録にのこらない贈与とは、例えば、会社経営者が後継者へ自社株式の贈与をする場合、会社経営者が自分の会社へ自己資金を貸し付けているケースでその貸付金を後継者へ贈与する場合、などは、預金通帳や法務局の登記簿など客観的事実を証明する記録が残らない贈与となります。
そのような場合には必ず契約書を作成するようにしています。
3.契約書が贈与の日にあったことを証明する確定日付
しかし、これで完全な訳ではありません。都合のよい架空の事実を証明するため、後日遡った日付で契約書を作成したのであり、本来はその日に贈与という事実はなかったのでは?と言われる可能性もあります。
たしかに、パソコンで文章を作成し、日付だけ改ざんすれば、実際は平成29年6月7日に贈与がなかったのに、後日において契約書上は贈与があったことにすることも不可能ではありません。
よって、本当にその日に贈与があった事実を後日立証するための補強材料として、公証役場で公証人に確定日付を押してもらうことがあります。(下の写真は、昨年平成28年12月15日にある契約文書に押印していただいたもの)
上記印を契約書に一箇所そして、同じ印を割り印の形でもう一箇所に押してもらいます。料金は一件につき700円です。
この確定日付を押印してもらえば、その日付にその証書(文書)が確かに存在していたことを公に証明することになります。その契約書が贈与の契約書なら、その日付でその贈与契約書があったことを証明してもらえます。
ここまで証拠を作成しておけば、その日付でその贈与があったことは間違いないという事実が非常に強く推認される(証明される)ことになります。
4.確定日付を押印していただく公証人とは?
なお、公証人とは、どんな人かご存じですか?一般社団法人東京公証人協会のホームページでは、下記の通り説明されています。
公証人とは、法律の専門家であって、当事者その他の関係人の嘱託により「公証」をする国家機関です。公証人は、裁判官、検察官、弁護士あるいは法務局長や司法書士など長年法律関係の仕事をしていた人の中から法務大臣が任命します。公証人が執務する場所を「公証役場」と呼んでいます。
一番、よく公証人の名前が登場するのは、公正証書遺言を作成するときではないでしょうか。また株式会社の定款の認証なども、公証人が行っています。
恥ずかしながら、私は会計事務所に勤める30半ばの年齢まで、この公証人役場の存在を全く知りませんでした。例えば大阪府では11箇所、兵庫県には10箇所等、身近に公証役場はあり、そこに公証人の方がおられます。
以上、契約書がその日に確かにあった事実を証明する確定日付について述べてきました。公証役場は、なんとなく一般の方にとっては敷居は高いかもしれませんが、別に弁護士や司法書士等の資格をもっていなくでも、つまり誰でも直接お願いしにいくことは出来ます。
もし契約書を作成したうえで、贈与を行うことがあり、かつその事実を補強したいなら、その契約書に公証役場で確定日付をとられることをお勧めいたします。
今西 学
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