相続税の土地評価に使う倍率表の当てはめに際し、「大字」という住所に気付かず混乱してしまいました。

みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。

今日は、少し専門的な話ですが、しかし本当にお伝えしたいのは、日常生活の一般常識的な話であります。

相続税・贈与税の財産評価で、農地の評価があります。税理士試験の相続税法の問題では、農地は倍率を使うことが多かった記憶があります。

よって受験生の方は、農地は、固定資産税評価額に国税庁が定めている倍率表の倍率を乗じて評価するというイメージがある方も多いと思います。

今回、依頼をうけて評価する必要があったのは、市街化区域にある市街地農地の評価でした。市街地農地は、宅地としての価額から造成費を控除する宅地比準という考え方で、計算する必要があります。

しかし、評価対象地域が、市街地農地であるのに、倍率表をみると、倍率地域に該当しているようにみえて、当惑してしまったお話です。

1.市街地農地の評価

相続税や贈与税に関する農地の評価については、財産評価基本通達にて決められています。まず、財産評価基本通達34、36~36-4にて、農地について次のような分類を行うことが求められています。

市街化調整区域にある「純農地」から「中間農地」「市街地周辺農地」と順に徐々に市街化区域に近づいてきて、市街化区域にある農地が「市街化農地」という区分で分類します。

上記の農地を分類したうえで、その分類に応じたそれぞれの評価が定められています。

財産評価基本通達37で「純農地」の評価、同38で「中間農地」の評価、同39で「市街地周辺農地」の評価、同40で「市街地農地」の評価が書かれています。

簡単にいうと、「純農地」「中間農地」は固定資産税評価額に国税局長の倍率を乗じた額で求めます。

一方、「市街地農地」は、その農地を路線価等により宅地として評価した額から、農地を宅地に転用するための造成費を控除した金額で求めます。

もう一つの「市街地周辺農地」は、「市街地農地」であるものとしてて評価した額に80/100を乗じて求めることになります。

よって大きくまとめると、「純農地」「中間農地」は固定資産税評価額と国税局長が求める倍率表で求めます。

一方、「市街地周辺農地」「市街地農地」は固定資産税評価額と国税局長が求める倍率表を使わず、路線価等より宅地の価格を求めたうえで、農地から宅地へ転用する費用を控除する方法で算定します。

2.倍率表をみると、倍率地域にあるように見えた市街地農地

今回、評価が必要な土地は、大東市の中垣内1丁目にある土地でした。(「なかがいと」と読みます。)こちらは、大東市役所の都市政策課でも確認したのですが、第一種低層住宅地域となっている市街化区域に該当しています。

しかし、こちらの倍率表をご覧下さい。

大東市の「中垣内」は、「阪奈道路沿い」と「上記以外の地域」に分かれているのですが、どちらも田や畑のところに倍率が書かれており、「比準」とは書かれていません。(比準とは、宅地の価格をベースに農地の価格を求める「宅地比準」のことです。)

大東市の農業委員会に行って、再確認もしたのですが、今回評価する中垣内1丁目の土地は、やはり純農地や中間農地の定義にあてはまるものではなく、間違いなく市街地農地に該当します。

市街化農地なのに、国税局長の定めた倍率、田が純22、畑が純37という倍率を使い評価することになっているのは何故?当初は考え込んでしまいました。

3.税務署に確認すると納得。「大字」という場所には要注意である。

今回、当該土地の所有者には、間違いなく宅地に近い評価をする、宅地比準になる旨お伝えしていました。ただこの倍率表をみると、それでは矛盾が生じてしまいます。

自分なりに調べてもどうしても解決しなかったことから、やむなく門真税務署に確認してみました。

応対していただいた担当官もはじめは戸惑われていましたが、路線価作成の担当者に確認していただき、丁寧な回答を折り返しいただきました。そして、その意味するところが次の通りであることがわかりました。

私は、大東市中垣内という住所においては、1丁目~7丁目まであることを把握していました。しかし、それ以外にも中垣内という住所を使うところがあったのです。

それは、中垣内(大字)という場所で、少し離れた生駒山という山の山麓に近い市街地周辺地域でした。(大阪の方は、ご存じかもしれませんが、「はや山荘」という焼肉店があるあたりです。)

この倍率表に出ている「中垣内」は、この中垣内(大字)の農地が純農地に該当することから、この地域の農地を評価するための倍率が掲載されているといういことだったのです。

一方、「中垣内」という住所がついても、中垣内1丁目から7丁目にある農地は倍率表は使わず、宅地の評価をベースに農地を評価することになります。中垣内1丁目から7丁目は、この倍率表に記載している「中垣内」には含まれないとのこと。

そう言われれば、上記写真の倍率表の「中垣内」の一つ上の「寺川」という住所がつく地域は、「寺川(大字)」と「寺川1~5丁目」に分かれています。

Yahoo!の地図サイトで確認すると、大東市には、寺川(大字)や中垣内(大字)という場所が出てきます。要は、(大字)と〇丁目がついている地域は、国税庁の倍率表では区分されているということです。

ここで出てくる(大字)という地域は、どういう意味があるのか、気になってネット検索してみました。

残念ながらわかりやすくその意味をわかりやすく示すサイトは見つかりませんでした。ただ、こちらの大阪府門真市のサイトを見ると、まだ住居表示を実施していない場所が(大字)ということです。

ひょっとしてこんなことは、大人の一般常識なのかもしれませんが、私はこの(大字)については、ぼんやりとしか今まで把握していませんでした。

これから、こういった国税庁の倍率表をみるときは、「〇丁目が入っている地域」と「それ以外の地域」を区別して把握せねばならないときもあることを、しっかりと頭に入れておきたいと思います。

4.結論

結局、今回評価をご依頼いただいた市街化農地も、宅地比準で評価することについて、税法上の理屈と、倍率表の考え方が一致いたしました。当たり前なのですが・・・。

今回評価する中垣内1丁目の土地は、結構難しい土地なので、間違えないように慎重に評価していきたいと思っています。

以上、いい勉強になりましたが、少し困惑した出来事でした。

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今西 学

今西 学

大阪の大東市(最寄駅:JR学研都市線の住道駅)で税理士事務所を開業中。(ホームページはこちら) このブログでは、税金・年金・お金の運用など日々の業務で気づいたことや、幼少の頃身体が弱かったことから常に健康で生きていきたいという思いで日々取りくんでいること等を記事にしています。 詳しくはこちら