みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。交際費の特例の延長のニュースが最近出ていました。
交際費は、会計上はどんなときも経費として処理しますが、法人税法上(つまり税金の計算上)は、経費になる金額が制限され、税金の節税にはつながらないことがあります。
それが、現在、景気活性化の目的で、平成29年度末まで経費になる金額を従来より拡大して認めているのですが、その特例の期限が2年延長される方向だとのことです。
1.交際費とは?
交際費とは、国税庁のホームページの記載を引用すると
交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出する費用をいいます。
となっています。よく見られるのが、得意先に食事をごちそうしたり、お中元・お歳暮を贈ったり、ゴルフや旅行に招待するケースなどでしょうか。
私の顧問先は、すべて中小法人で、その中でも規模は小さいお客様ばかりです。よって交際費を支出されている金額は、多くても100万円前後のお客様がいるぐらいです。お客様が不特定多数の最終消費者であるサービス業などは、交際費として使う金額は小さく、企業間取引が多い業種は使う交際費も多いのが一般的でしょう。私の経験では、製造業の会社は、あまり売り先の会社を接待することは少ないですが、下請けをしている建設業の会社は、接待費用をかなり使い、売上をあげていく場合もありました。
2.現在の法人税法上の計算上も経費となる交際費について
現在の法人税の取扱は、以下の通りになっています。
(1)中小法人の場合
中小法人とは、資本金1億円以下の会社で大企業の子会社などでない会社のことを言います。
→年800万円まで全額経費(平成25年度に改正する前までは、年600万円まで経費。また経費になるのは交際費の90%までであった)か、飲食費の50%(平成26年度改正で新たに設けられたもの)まで経費扱いか選択
(2)それ以外の場合
→飲食費の50%まで経費扱い(平成26年度の改正前は、交際費は一切経費にならずです。)
以上の通りです。なお、平成18年度改正で、一人当たり5,000円以下の飲食費は、一定の要件をもとに、中小法人・それ以外の法人とも、交際費から除外されています。(つまり普通の経費と同じ扱いが出来るということです。)
これをみると、私の顧問先でもある小さな中小法人では、年600万円まで交際費を使っていない場合も多かったので、800万円に拡大された影響は少ないかもしれません。
ただ中小法人以外の大法人については、法人税の計算上経費に出来なかった接待飲食費が、平成26年度改正により経費に出来るようになった影響は、節税という観点からは大きかったかもしれません。よって、大企業は交際費を使いやすくなった面があることは事実でしょう。
3.交際費はなぜ厳しく制限されるのか?
なぜ交際費は、他の経費と違い、法人税の計算上、厳しく扱われるのでしょうか?当初は、交際費等の濫費や冗費を抑制して、企業に留保して資本の蓄積を図るという意図からと言われています。
またぎょうせい出版社から発売されている小林俊道著作「ケースで理解する交際費・接待費の税務ポイント」を参照すると、
時代の経過と共に「交際費をたくさん使える資本力のある企業が、そうでない企業との競争において、交際費の使用にものを言わせて公正な取引を阻害することを防止する」といった役割や、「企業の交際費の支出による濫費が、その企業が提供する商品やサービスに転嫁されては、国民経済の観点から問題があり、これを防止する」といった役割があるともいわれるようになってきた。
とあります。
私自身は、この後者の価格に上乗せされるというのは、なんか実感があります。建設業の接待は、業界内で一般的ですが、この金額は建築価格に転嫁されているのかなと思ったことがあります。まあ、大規模の建設工事の価格は、かなりの金額になるので、接待交際費が上乗せされても割合としてはごく小さいものかもしれませんが。
それ以外にも、接待を受ける方が、食事を提供されるという経済的利益を受けているのに、所得税が課税されていないから、接待をする法人の方で課税するという考え方を先日研修で聞きました。
確かに、個人が給料をもらったり、事業で利益をあげたり等、どんなかたちでも個人に利益があるとそれに対して所得税(あるいは贈与税・相続税)が課されるのが通常です。
それなのに、贈り物・食事などの提供を受けるという利益をうけても、もらった人は確定申告をして、それに対して納税するわけではありません。そう考えると、交際費は法人で課税されるというのは、法理論上は、一応納得出来るかなと個人的には思います。
財務省のホームページによると、アメリカ、イギリス、ドイツでも交際費は、税金の計算上の経費としては制限されているようです。ただ 企業が交際費を使うことが、経済活性化のために必要といえば、それもその通りである気がします。
正直、私自身は、あまり交際費を使って会社が利益をあげるという仕組みは好きではありません。ただどうせ特例を延長し、交際費を使うことを促進するなら、それが経済活性化につながってほしいと思います。
今西 学
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