みなさん。こんにちは。now3のアドレスでブログを更新している大東市の税理士・社労士の今西 学です。
みなさんは、「サンクコスト」という言葉を聞いた事がありますか?
私が事業の決断をやるうえで、強く意識している言葉です。(実際には、サンクコストにとらわれてしまうこともあるのですが・・・。)
事業に関わるみなさんも、、ぜひこの言葉を意識して、事業上の決断をしていただきたいと思います。
1.サンクコストとは?
サンクコストとは、埋没費用のことです。ウィキペディアでは、「事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻ってこない賃金や労力のこと」とあります。その例として、次のような例が挙がっています。
1,800円のチケットを購入して2時間の映画をみようとしたが、10分見てこの映画は面白くないことが判明した。この時点で、映画をあと1時間50分、見続けるかの判断することがあるとしましょう。その場合、チケット代1,800円は絶対に返金してくれない費用だから、残り1時間50分、映画を見続けるか、退場して違うことをするのかは、その1,800円を考慮せずに考えないといけない。その場合の、もう戻ってこないお金のことをサンクコスト(埋没費用)といいます。
ただこの映画の例は、あまり現実的ではないかもしれません。実際は10分で映画のすべてを判断するのは難しいですし、仮に面白くないと判断できたとしても、映画館がいっぱいなら途中退場するのも気がひけたりしますよね。
もう少し一般的に見られるいい例が、本を購入して読書する場合だと思います。1,800円程度の本を購入したが、1/3ぐらい読んだら期待外れで面白くない、そんなことは現実にもあると思います。その時点で、一日の限られた読書時間を、このまま読み続けて時間を費やすのか、その時間を違う本を読むのにあてるのかを判断する際に、もう返金されない本代1,800円は返金されないサンクコストであるので、考慮してはいけないということです。なぜなら1,800円はどのような意思決定をしても取り戻すことは出来ないので、それにひきずれらて今後の読書時間の使い方を決定するのは合理的でないということになります。
上記の例が、個人のあくまでプライベートな話の場合、人間はすべて合理的に考えるものではないので、それが自分の生き方であるなら、そのまま面白くなくても読み続ける選択肢はありだと思います。
ただ事業をやっている人は、生きていくために利益を出す必要があります。よって、サンクコストは無視して、自分の今後の事業をどうしたら最もよく展開していけるかを考えて決断していく必要があると思います。
2.私が経験したサンクコストの実例
私も、顧問契約をしているお客さまとの関係でこのサンクコストを意識したことがあります。税理士とお客さまは、お金の問題を扱いますので、やはりどこか同じ方向性をもっていないと税理士はいいアドバイスも行えないと思っています。
そうはいっても私の場合、開業当初~3年目ぐらいまでは、紹介者に紹介手数料を払ったり、契約を悩んでいる人には初年度は料金を大幅に値下げしたりして、どんな人かにかかわらず顧問契約を締結してもらおうと必死でした。
そして顧問契約していただいたお客さまへは、懸命にお客さまのために取り組んたつもりではありますが、残念ながら結果的に相性のよくないお客さまからは、初めての決算終了とともに、今ひとつ価値を感じないからと、値下げの継続や更なる値下げを求められることもありました。
そんなとき、顧客獲得のために支払ったコストがかかっているし、最初の一年はその事業者のための会計税務の準備のための時間もかなりかけているので、値下げを受け入れてまで今後も契約を続けるよう顧問先にお願いするか、悩みました。(何せ収入が十分でなかったときです。)
ただ最終的には、その人のために払ったコスト、労力はかえってこないサンクコストなので、努力してもなかなか自分の価値をわかってくれない人に今後の時間を費やすより、自分の価値をわかってくれる人とつきあえる仕事を見つけた方がよいと考え、契約の解消を自分から申し出る決断をするようにしていました。そのため生活は厳しくなりましたが、長期的には少しずつ自分の価値がわかってくれるお客さまが残ってくれ、なんとか少しずついい事務所経営ができるようになってきました。
3.感情的にならずに冷静にベストな道を選びましょう
私は中小企業診断士の勉強をしているとき、この「サンクコスト」という言葉に出逢いました。最初は、「thank you 」つまり「ありがとう」という意味に関係するのかと思ったのですが、実際は全く関係ありません。ただなんとなく、印象に残る響きの言葉でありました。
事業をしていく中で、「継続は力なり」も重要で、ずっと同じことをあきらめずに続けていくことも非常に大事だと思います。ただ、「時間」も「お金」も有限です。決断が必要な際には、その時点において、どのような行動をとるのが最善か、その時点で、戻ってこないコストや手間を考えから外し、感情的にならず冷静に適確に判断していくことが、事業をしている人には求められるものだと思います。